国内騒乱のイラク、原油生産量が過去最高水準に
ニューヨーク(CNNMoney) イラクの今年5月の原油生産量が日量約450万バレルと同国の過去最高水準を記録したことが9日までにわかった。市場調査企業JBCエネルギーが推定数字として報告した。
4月と比べ約10万バレルの増加。フセイン旧政権打倒を目指した2003年の米軍事作戦前の水準と比べ日量約200万バレル多い。
同社の上席コンサルタントは、イラクは過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の台頭など政治や安全保障面での難題を抱えながらも原油増産で大きな成功を収めたと評価した。原油生産施設からISISの拠点から遠く離れて南部地域に集中していることも奏功している。
イラク原油の増量分の多くは米国に流れている。米国への輸出量は今年1月以降、3倍の規模となり、現在の水準は14年7月以降では最大量となっている。
一方で夏季になれば政治問題が過熱化するとの予測もあり、イラク政府は南部の原油関連施設の警備を強化したとの情報もある。
国際通貨基金によると、イラクの原油収入は14年の連邦政府予算の94%を賄った。米シンクタンク「ブルッキングス研究所」によると、現在の原油収入は輸出額の99%を占め、連邦政府予算の約90%を支えている。
ただ、国防予算や治安部隊の維持などで原油収入に大きく頼ざるを得ないイラクの現状を懸念する指摘もある。
サウジアラビアなど他の中東産油国と同様、イラクも過去2年、原油価格の急激な下落で打撃を受けた。また、少数民族クルド人の地域政府との原油収入の分割問題の解決も目途が立っておらず、一部油田での生産停止に伴う損失額は日量10万~15万バレルともされる。
イラク内での原油生産は貧弱な電力供給網や日常的な停電の発生の懸念も抱えている。特に電力不足の深刻な問題で、老朽化した油井修理や新たな油田発見に必要な外資の呼び込みを左右する要因となっている。