創造性の「暗黒面」 抑鬱や狂気が天才を生み出す?
これ自体は正当な批判だ。ただ、最近の研究では、調査対象が大きく広がってきた。
スウェーデン・カロリンスカ研究所のシモン・クヤガ氏の研究チームは、約120万人に及ぶ精神科患者とその親族を調査。ダンスや写真など、創造性が要求される分野で活動している人は、双極性障害を発症する可能性が8%ほど高いことが明らかになった。この傾向は特に作家に顕著で、一般よりも121%増大する。
創作活動にたずさわる人の親戚が、統合失調症などの精神的な疾患を抱える可能性が高いこともわかった。この点は重要で、以前から、創造性と精神疾患が同居して「遺伝」するのではないかと指摘されてきたからである。有名な例でいえば、物理学者アインシュタインの息子や小説家ジョイスの娘は、統合失調症だった。
遺伝子の役割をより直接的に調べた研究もある。ハンガリー・センメルベイス大学の精神科医ケリ・サボルチュ氏は128人の被験者に対して「創造性テスト」を実施し、その後に血液検査を行った。同氏の研究結果によれば、創造性豊かな被験者は精神疾患に関連する遺伝子を保有しているとされる。
このように、創造性と精神疾患に統計的な相関があることが明らかになりつつあるが、背後にある身体的なメカニズムはどのようなものだろうか。器質的には未解明の部分が多いものの、脳科学の側から興味深い研究が出ている。