より良き世界に向けて学んだ教訓 安倍首相が寄稿
(CNN) 成長は繁栄をもたらし、繁栄は平和をもたらす。今月、米ニューヨークでの国連総会に世界各国の首脳が集まるとき、このような言葉が頻繁に聞かれるだろう。そして、これは正しい。だが国連が今年創設70周年を迎えるにあたって、この言葉が現実の世界や現実の人々の生活にどのように当てはまるのかを冷静に考えてみることには意義がある。
CNNが私に、開発や繁栄が現実の世界で何を意味するのかについての個人的見解や、より一般的に我が国がこの問題をどう見ているかについて寄稿を依頼してきたとき、私は昨年のコートジボワール訪問を思い出した。日本はコートジボワールで女性向けの基礎的な識字教育の改善や、針仕事など需要の高い技術を教える職業訓練施設の支援を行っている。私はそこで見た若い女性たちの笑顔や、未来への希望に満ちた顔を決して忘れることはないだろう。
この60年間、日本は開発途上国のパートナーであり続けてきた。各国の個別のニーズを尊重し理解しつつ、人材育成やインフラ整備のために必要性の高い支援をしてきた。
だが、世界中で多くの人々が依然として貧困にあえぎ、また家を失って避難している状況の中、やるべきことはまだ多く残されている。
例えば、最近中東や北アフリカから周辺諸国や欧州に大量流入している難民問題は、深刻な人道的危機であり、さらなる国際協力の必要性を浮き彫りにしている。日本は難民の受け入れ国とともに断固たる姿勢で臨み、全力を挙げてこの課題に取り組んでいきたい。
ただ、世界の平和と安定を維持するためには、各国が個別に行動するだけでは不十分だと我々は認識している。我々が国際協力の原則に基づき、「積極的平和主義」を通じて国際平和と安定のためにより大きな役割を担おうとする理由はそこにある。我が国の国会で9月19日に可決・成立した法律は、国際平和協力活動における日本の自衛隊の参加範囲を拡大することを可能にした。
協力へのもう一つの場となるのは国連だ。私がニューヨークでの会議に参加するのもそのためだ。だが、世界の平和と安定を促すその能力を最大限引き出そうとするのであれば、我々は、国連が世界の国や人々が直面する課題の解決に向けてその卓越した力を発揮できるよう、中心的役割を果たす安全保障理事会を含めた国連の改革を進めていくべきだ。私はこうした21世紀にふさわしい方法で追求された改革が、最終的に平和と繁栄、安全をもたらすものと信じている。
さて話を日本に戻そう。我々はこれまで次の3点を軸に開発協力に取り組んできた。1つ目は一人ひとりすべての人を重視すること(人間の安全保障)、2つ目は開発途上国が自助努力する力を信じること(自助努力の支援)、3つ目は自立的発展を促すこと(持続可能な成長)だ。
これらの諸点は、実際には何を意味しているのだろうか。