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ボッティチェリの「失われた」傑作、南イタリアの住居で発見 160億円

15世紀に描かれたボッティチェリの絵画が、伊ナポリの当局によって回収された

15世紀に描かれたボッティチェリの絵画が、伊ナポリの当局によって回収された/Carabinieri for the Protection of Cultural Heritage

ローマ(CNN) 15世紀のイタリアの巨匠サンドロ・ボッティチェリが描いた絵画で、1980年代以降所在不明と記録されていた作品が、イタリア南部の住居で見つかった。

聖母マリアと幼いキリストが描かれたこの作品は、ナポリ近郊の町グラニャーノの住居で発見された。伊警察でナポリの文化遺産保護を担当する部局が明らかにした。

「ビーナスの誕生」や「プリマベーラ(春)」といった代表作で知られるボッティチェリの手掛けた同作の価値は、伊当局の推計で少なくとも1億ユーロ(約160億円)。作品は1470年、ローマ・カトリック教会の依頼で制作された。

大きさは縦80センチ、横58センチ。木の板に描かれたテンペラ画で、ナポリ郊外のサンタ・マリーア・ラ・カリタにある教会に1900年代初頭から飾られていた。当初作品が贈られた教会は、これ以前に焼失していた。

教会が82年に地震で被害を受けると、作品は教区からソンマという家名の地元の家族に渡り、保管された。伊文化省の報道官が明らかにした。同報道官はCNNの取材に答え、絵画を同家族に預けるとした公式の法令が記録に残っていると説明。家族らはいかなる犯罪捜査の対象にもなっていないと述べた。

絵を預かってから最初の数年は、地元の当局が状態を確認し、保管場所の助言の他、移動や汚れを除去する際の手助けをしていた。

しかし何らかの理由から、そうした確認は90年代に途絶え、絵画は文化省の所在不明作品の目録に加えられた。

ナポリ近郊の住居から回収された作品は今後博物館で保管される/Carabinieri for the Protection of Cultural Heritage
ナポリ近郊の住居から回収された作品は今後博物館で保管される/Carabinieri for the Protection of Cultural Heritage

目録は頻繁に更新されている。同作については今夏、ソンマ家とのつながりを確認。同家の住居に長年展示されていたことが分かった。警察幹部のマッシミリアーノ・クローチェ氏が、発見に関する発表の中で明らかにした。

現在絵画を所有する分家にまでたどり着いた後、警察は地元の首長と連携。首長は既にボッティチェリ作品がソンマ家宅にあるのを把握しており、回収に当たっての仲裁に協力してくれたとクローチェ氏は語る。

「世間に全く知られていなかった作品だが、今後は国による調停のおかげで再び展示されるだろう。我々は行政的な手法を取り、検察への訴えも差し押さえも行わなかった。これも首長が仲介してくれたおかげだ」(クローチェ氏)

クローチェ氏が付け加えたところによると「当該の家族は引き続き作品の所有権を保持するものの、絵画自体は美術館に保管される」という。

絵画には広範な修復が必要になるとみられる。描かれた聖母マリアはブロンドの髪をベールで覆い、丸々と太った赤ん坊のキリストをひざに抱いている。ボッティチェリの他の作品にも描かれている姿だと、文化省は指摘する。

一部絵の具が失われたり、こすれたりした箇所は、恐らく80年代の地震とそれに続く引っ越し時に生じたものと思われる。

行政が絵画の確認を止めた理由は不明。

クローチェ氏は「最後に当局がボッティチェリ絵画のある個人宅を確認したのは50年以上前だ」「以後、どういうわけか絵画は当局から忘れられた」と述べた。

同作は、1510年に没した巨匠が描いた最後の絵画の一つと考えられる。

最終的にはナポリにある国立美術館の一つで展示される予定だが、文化省によれば修復には少なくとも1年かかる見通し。

ソンマ家はCNNからの連絡に対し、コメントを控えた。

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