愛の重みで名所の橋も悲鳴、南京錠撤去へ パリ
(CNN) パリ市は1日、セーヌ川にかかるポンデザール橋に観光客が取り付けていった大量の南京錠を撤去する作業に着手する。同橋がかかるのはユネスコの世界遺産に指定された一画。錠の重みで橋が破損する恐れに加え、市民と観光客の安全にも配慮し、撤去の判断に踏み切った格好だ。
愛の証しとして橋に南京錠を取り付ける行為は、2006年のイタリアのベストセラー小説をきっかけとしてローマで始まり、08年ごろパリに波及した。中にはセーヌ川に鍵を投げ込んで愛を誓うカップルもいる。
しかし欄干の一部が南京錠の重みで崩れるなど、12年ごろから問題が浮上した。現時点で取り付けられた錠の数は70万個以上。重さはゾウ20頭分に相当すると推定される。
南京錠の取り付けはほかの橋にも及び、落書きやスリ、安い南京錠を売る業者なども横行した。ナポレオン時代の1800年代に建設された美しい遊歩道は、いつしか地元住民が避ける場所になっていた。
南京錠の取り付けに反対してきた団体は、「史跡を守るための対策が必要だった。世界遺産に指定された全区域が、愛の南京錠のため危機に瀕している」と訴える。
市は昨年8月に、南京錠を付けるのではなく橋の上で自撮り写真を撮るよう呼びかけるキャンペーンを実施したが不発に終わった。今年2月にはバレンタインデーに合わせて南京錠を木の板で覆う対策も実施していた。
ポンデザール橋の周辺にフランス語と英語で張り出された掲示によると、南京錠を撤去する作業のため、同橋は6月1日から8日まで通行止めになる。さらにこの秋にかけて、橋を保護するためのガラスの覆いを取り付ける作業が予定されている。
もっとも南京錠の被害はポンデザール橋にとどまらない。少なくとも11の橋やエッフェル塔などの観光名所に取り付けられた南京錠は100万個を超えているといい、「観光業界がこの行為を愛の証しとして宣伝している限り、闘いは続く」と保護団体は宣言する。
同団体はパリ市に対し、ローマにならって南京錠の全面禁止に踏み切るよう求めている。