圧勝のトランプ、バイデン両氏に課題も スーパーチューズデー、8つのポイント

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各州の予備選、党員集会が集中した「スーパーチューズデー」。結果から見えたものは?/Getty Images via CNN Newsource

各州の予備選、党員集会が集中した「スーパーチューズデー」。結果から見えたものは?/Getty Images via CNN Newsource

(CNN) 米大統領選に向けた民主、共和両党の予備選と党員集会が集中した5日の「スーパーチューズデー」で、民主党のバイデン大統領と共和党のトランプ前大統領がそれぞれ圧勝し、本選での再対決に大きく近づいた。

民主党では「プログレッシブ」と呼ばれる急進左派がバイデン氏への投票を拒否して「支持候補なし」の選択肢にマークし、共和党では都市近郊の高学歴層がトランプ氏でなく対抗馬のヘイリー元国連大使を選ぶなど、両党で本選に向けた課題の兆候もみられた。

それでもバイデン、トランプ両氏が全勝に近い結果を出し、指名獲得に弾みをつけたことは確かだ。

両党の候補指名争いの最大のヤマ場となったスーパーチューズデーのポイントを振り返る。

1.トランプ氏が大勝

共和党の投票は15州で行われた。トランプ氏はバーモント州でヘイリー氏に敗れたものの、指名レースの独走状態を維持した。

集計が続く5日深夜0時前時点の推計で、トランプ氏がこの日に獲得した代議員は617人。ヘイリー氏の23人を大きく上回った。

これまでのレースでトランプ氏が獲得した人数は全体の92%に当たる計893人と、指名獲得ラインの1215人に迫る勢い。ヘイリー氏は66人にとどまっている。

トランプ氏はフロリダ州パームビーチの私邸マール・ア・ラーゴで開票結果を見守り、「スーパーチューズデーはビッグイベント。しかも今回は前代未聞のスーパーチューズデーと言われている」と話した。演説の中でヘイリー氏には言及しなかった。

スーパーチューズデーの夜、私邸マール・ア・ラーゴでのイベントで演説するトランプ前大統領/Evan Vucci/AP via CNN Newsource
スーパーチューズデーの夜、私邸マール・ア・ラーゴでのイベントで演説するトランプ前大統領/Evan Vucci/AP via CNN Newsource

2.バイデン氏も圧勝

バイデン氏はここ数カ月、厳しい報道が相次いで支持率が低迷を続け、本選に向けた世論調査でも不安な結果が出ていた。

しかしこれまでの予備選と同様、スーパーチューズデーでも少数の対立候補を引き離し、80%前後の得票率で圧勝を収めた。

トランプ氏がこれだけの得票率に達することはめったにない。バイデン氏の対立候補に比べてヘイリー氏のほうが強力な存在であることを考慮しても、バイデン氏が党内で幅広い支持を得ていることは明らかだ。

11月の本選でも、トランプ氏は現在と同じ逆風が予想されるのに対し、バイデン氏には党内の批判勢力を説得する余地が残されている。特に現在、パレスチナ情勢への対応が激しく批判されているが、それも次第に収まっていく可能性が高い。

一方のトランプ氏はトランプ氏という人物のまま、党内で30~40%に上る不支持層を抱え続けることになるだろう。

3.トランプ氏への危険信号

トランプ氏は圧勝を収める一方で、本選に向けた危険信号も突きつけられた。

ヘイリー氏は都市部や学生街、都市近郊で最大の強さを見せた。特に都市近郊では、トランプ氏が共和党候補に指名されるようになった2016年以降、大卒の高学歴層が民主党へ流れる動きが目立っている。

高学歴層が急増している激戦州のノースカロライナで5日、CNNが実施した出口調査では、ヘイリー氏に投票した有権者の81%が、本選でトランプ氏に投票することはあり得ないと答えた。

とはいえ、出口調査によればトランプ氏は同州で無党派層の票を獲得し、農村部に加えて都市部と都市近郊、さらに大卒者の票でもヘイリー氏を上回った。

バージニア州ではヘイリー氏が大卒組を小差で制したが、都市部と都市近郊の票はトランプ氏が勝ち取っている。

4.バイデン氏への悲報

上にも書いたように、一部の有権者はバイデン氏がイスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ地区での軍事行動を支持し、停戦を促してこなかったことに強く反発している。

その人数は決して多くないかもしれないが、本選は大接戦となることが予想され、激戦州の数万票で勝敗が決まる事態も考えられる。対イスラエル政策への不満などが原因で民主党支持者の投票率が下がり、結果が覆る可能性もある。

ミシガン州では、先週の民主党予備選で10万人あまりが「支持候補なし」と投票し、バイデン政権の対イスラエル政策に抗議する意思を示した。

5日もイスラム教徒の多いミネソタ州で「支持候補なし」の抗議票が目立ち、開票率89%の時点で4万5000票と、全体の20%に迫る勢いを見せた。最大都市ミネアポリスを含む選挙区では、「支持候補なし」が30%を超えた。

第3党の候補による影響も懸念材料のひとつだ。今のところ大きな影響力を持つ候補者はいないが、ケネディ元大統領のおい、ロバート・ケネディ・ジュニア氏が参戦の準備を進めている。同氏の陣営は5日夜、ネバダ州で投票用紙に名前が記載されるのに必要な数の署名が集まったと発表した。同氏がすでに基準をクリアしたというニューハンプシャー州と同じく、バイデン氏が落とすわけにはいかない重要な州で、ケネディ氏の存在が結果を左右することも考えられる。

5.ヘイリー氏の沈黙が語るもの

ヘイリー氏の陣営はこれまでの予備選で、敗北が確実になった後も記者団にその先の構想を語り続けた。次の州で出す広告の予算を発表し、同氏の日程表が作られた。ヘイリー氏自身も支持者らへの演説で、指名争いの見通しを描こうと試みていた。

だが5日の夜は様子が違った。

ヘイリー氏は出身地のサウスカロライナ州で、トランプ氏が勝利を重ね、大逆転の望みが消えていく過程を見守っていた。支持者の集会も、本人のコメントもなかった。その沈黙が語るものは大きい。

共和党内ではヘイリー氏に撤退を促す動きが強まった。トランプ氏の盟友、グラハム上院議員はCNNとのインタビューで、ヘイリー氏が「チームプレーヤー」としてトランプ氏への支持を表明するよう期待していると述べた。

グラハム氏の紳士的な発言とは対照的に、トランプ氏は別のインタビューで、ヘイリー氏が「悲惨」な状態で「動転」し、「怒り狂っている」と語った。

6.劇的だったのはバーモント州と米領サモア

今回のスーパーチューズデーに劇的な展開はほとんどなく、接戦になったのはバーモント州だけ、サプライズが起きたのは南太平洋の米領サモアだけだった。

CNNなどの報道機関は、投票が締め切られた直後からほとんどの州でトランプ氏とバイデン氏の勝利を予想していた。

ただサモアで開かれた民主党の党員集会では、91票のうち51票を起業家のジェイソン・パーマー氏が獲得し、バイデン氏が40票で敗れた。

パーマー氏は一部の州と海外領土で立候補資格を得たものの、あまり知られていなかった候補。本人はサモアを訪れずにオンラインで集会に登場し、現地の専任スタッフはわずか3人だった。

米領サモアでの民主党党員集会でバイデン氏を破った起業家のジェイソン・パーマー氏/From Jason Palmer/X via CNN Newsource
米領サモアでの民主党党員集会でバイデン氏を破った起業家のジェイソン・パーマー氏/From Jason Palmer/X via CNN Newsource

バイデン氏に挑んだ民主党の対立候補のうち、勝利を収めたのは無名のパーマー氏だけという皮肉な結果になった。

巨額の資金を投じてきた対立候補の1人、ディーン・フィリップス下院議員は、出身地ミネソタでの得票率も10%に満たなかった。

サモアに割り振られた代議員は6人。2020年大統領選でも、民主党の候補指名を目指したブルームバーグ元ニューヨーク市長が唯一、サモアでは勝利するというサプライズがあった。

7.知事選で注目されるノースカロライナ州

ノースカロライナ州では知事選に向けて、共和党のマーク・ロビンソン副知事と民主党のジョシュ・スタイン州司法長官がそれぞれ候補に指名された。

ロビンソン氏は大胆な発言を繰り返して物議を醸してきた人物。同州では妊娠12週以降の中絶を禁止する法案に対する民主党のクーパー知事の拒否権を、共和党主導の議会が無効とした問題が大きな争点になるとみられ、共和党内部からロビンソン氏では戦えないと懸念する声も上がっている。

8.ノースカロライナ州下院選では共和党に朗報

ノースカロライナ州の下院第1選挙区の共和党候補には元陸軍大佐のローリー・バックハウト氏が指名され、民主党の1期目現職、ドン・デービス氏から議席を奪うことが期待されている。

同選挙区では最近、共和党に有利な区割り変更があり、党の全国委員会が「勝てる候補」としてバックハウト氏を擁立。下院指導部も資金面で後押ししていた。

指名を争ったサンディ・スミス氏は党内保守派の支持を受け、2020年大統領選の勝者はトランプ氏だったとする広告や、21年の議事堂襲撃に参加したとするツイートで物議を醸していた。

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