英裁判所、全身まひ患者の「死ぬ権利」認めず
ロンドン(CNN) 脳卒中で首から下がまひした男性が「死ぬ権利」を求めていた裁判で、英高等法院は16日、男性の訴えを棄却する判決を言い渡した。
原告のトニー・ニックリンソンさん(58)は7年前の2005年に脳卒中を起こし、動くことも話すこともできない「閉じ込め症候群」の状態になった。現在はまばたきでコンピューターや文字盤を操作して会話している。自ら命を絶つことさえできず、医師に安楽死させてもらう権利があると主張して訴えを起こした。
高等法院の判決ではこの訴えについて、「非常に難しい倫理的、社会的、法的問題を投げかけるもの」としてニックリンソンさんの状況に同情を示しながらも、訴えを認めようとすれば、本人の意思による安楽死を禁じた法律を覆さなければならないと指摘し、「法改正についての判断は議会が行わなければならない」と判断した。
やはり閉じ込め症候群に苦しんでいる別の男性の訴えについても同様に退けた。
判決を聞いたニックリンソンさんは、妻のジェーンさんとともに涙を流し、上訴の意向を表明。コンピューターを通じて、「裁判官や政治家は、真の問題と向き合わずに済むのが一番幸せだと思っていて、この訴訟の担当裁判官も例外ではない」「自分の人生をコントロールできるのが自分なのか国家なのかについて結論が出るまでの間、私はまた身体的不快と惨めさと精神的苦痛の中で過ごさなければならない」とコメントした。
娘たちは同日、父の「尊厳死の権利」を支持してほしいと短文投稿サイトのツイッターで呼び掛け、わずか数時間で2200人を超す署名が集まった。