フランス内相、ロマ野営地の撤去を指示 野党時代の姿勢転換
パリ(CNN) フランスのバルス内相は27日、パリ南部エブリーの線路沿いにある少数民族「ロマ」の野営地を撤去し、子ども19人を含む住民72人を排除するよう警察に指示した。「不衛生で不安定な生活状態」を理由としている。
オランド大統領率いる社会党は、サルコジ前大統領率いる当時の与党が2010年に各地でロマの野営地を撤去した際には非難する側に回っていた。しかしその姿勢を覆す形で、バルス内相の指示により、8月初旬以来5カ所の野営地が撤去されている。
バルス内相は、野営地の住民は別の場所に住居を確保し、国外退去はさせないと言明したが、詳細は明らかにしなかった。ロマについては「ああしたマフィアや未成年を通じた犯罪を行う者とは戦う必要がある」と強調した。
これに対して、ロマ支援団体の関係者は強い憤りを覚えると述べ、「仕事をしていた人は失業し、学校に通っていた子どもたちは教育が受けられなくなる」と懸念。「この国で人権が尊重されないことは容認できない」と語気を強めた。
オランド大統領は今年の大統領選では、ロマの野営地を撤去する際は別の解決策を提示すると表明していた。
サルコジ政権が10年にロマの野営地を撤去した際は、欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会が人権侵害の疑いで調査に乗り出した。この時はロマが自発的にフランスを出国すれば大人1人当たり300ユーロ、子どもは同150ユーロが支給された。
ロマは主に欧州南部と東部に住み、貧困生活を送る人も多い。定住せずに野営地やキャラバンで暮らす生活スタイルは、歴史を通じて迫害の対象になってきた。