世界で進む農地争奪戦 政権崩壊など社会不安の要因にも
(CNN) 世界銀行は毎年、土地と貧困に関する会議を開催しているが、今年4月に米ワシントンで行われた会合のテーマは土地管理の改善だった。開発途上国における不適切な農地管理が世界の安定を損なっており、世銀の資金もこれに拍車をかけているため、時宜を得たテーマだ。
近年、アジアやペルシャ湾岸の食料輸入国は食料価格の高騰や、国内での土地や水資源の不足を懸念して、国外で農地を取得している。欧米やアジアの民間投資家も、2015年までに300億ドルを農地に投資すると予測されており、投資額はさらに増える見込みだ。
主な投資対象のサハラ以南のアフリカや南アジアの貧しい国々では、土地の所有権は曖昧(あいまい)なものだ。そのため、資本を渇望する地元政府は、土地を安易に手放し、資金が豊富な投資家に驚くような便宜も提供している。たとえば、パキスタン政府は、同国陸軍の約6分の1に相当する10万人の警備部隊を提供したと報じられた。
その結果、信頼できる推計によると、2000年以降に取引された農地の広さは5000万ヘクタールで、これは英国とフランス、ドイツ、イタリアの全農地の半分を上回る規模となった。
投資家は、投資先の地域社会に対し、雇用や先進農業技術、食料の安定供給などを約束するが、ほとんど守られていない。最大の問題は、投資家の多くが輸出目的で作物を生産することだ。耕作の意思もない投資家が、投機目的で高価値の土地を取得することさえある。
このような農地取引は予想されるように、社会に動揺をもたらしている。