香港空港で書店が相次ぎ閉鎖、言論の自由に懸念も
香港(CNN) 香港国際空港で中国の習近平(シーチンピン)国家主席の顔を見ない日はほとんどなかったと言って良い。空港のターミナルでは先日まで、書店およそ16店で習国家主席に関する本を売っていた。だがその多くがこのほど相次いで閉店した。商業的な理由が要因とされているが、言論の自由の後退を懸念する声も上がっている。
空港で書籍を購入していたのは主に中国から来る観光客。中国政治の舞台裏や指導層の私生活を垣間見ようと、本土では発禁扱いになっている本を買い求めた。まじめな書籍と並び、中国当局のうわさ話を扱うゴシップ本の類いも売っていたが、このうち11店が今年に入って4月上旬までに閉店。観光客がこうした書籍を手に入れるのは難しくなりつつある。
独立系出版社を運営するルネー・チアン氏は「土産に書籍を買い求める本土からの顧客に、まじめな歴史研究書や回想録、ゴシップ本はいずれもよく売れていた」と話す。
書店の一部は洋服ブランドなどに取って代わられたほか、中国の国有チェーン書店も入居してきた。閉店の背景にはスマートフォンや電子書籍の普及など商業的な理由だとしているが、香港の自由が失われつつあることの証左だとして批判する声もある。
チアン氏は夫とともに「新世紀出版社」を運営している。「きわどい主題に関する本」を中心に売り上げは減少したという。証拠はないとしつつも、香港の書籍が中国本土に流入するのを阻止するキャンペーンの一環ではないかと指摘。低迷する香港の独立系出版社にとってさらなる打撃になったと話す。
新世紀出版社は「趙紫陽 極秘回想録」などの本を出版したことで知られる。故趙紫陽氏は中国共産党総書記を務めたものの、1989年の天安門事件で抗議に繰り出した学生に共感する姿勢を示したとして追放された。回想録は批評家から評価されるとともに、多くの議論を呼んだ。
チアン氏は「国際空港は香港の独立系出版社にとって重要な拠点だった。きわどい政治的な主題を扱った書籍を読むのは大半が本土から来た人たちで、地元の香港住民ではないからだ」と話す。