ISIS、石油収入減を「増税」で補う
ニューヨーク(CNNMoney) テロ組織の動向を追う研究機関は4日までに、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の資金捻出(ねんしゅつ)の現状に触れ、米軍主導の有志連合による空爆で油田施設が打撃を受けている中で支配下の住民から強制徴収する「税金」を増やして資金不足を防いでいるとする新たな報告書をまとめた。
デンマークの研究機関「テロ分析センター」による報告書は、ISISの軍事的敗北は差し迫っておらず、資金源遮断の実現もまだ先の話だとし、世界で資金的には最も潤沢なテロ組織であり続けていると結論付けた。
ISISが2015年に稼いだ資金は24億米ドル相当と推定。前年から5億ドル少なかった。ただ、イラクやシリアの支配地の住民から搾り取る税収などは14年の3億6000万ドルが昨年は8億ドルに激増したと計算している。
米軍によると、有志連合やイラク軍などの攻勢でISISは制圧地域の4割を失った。支配下にある住民総数は現在約800万人としている。
同センターの報告書によると、資金源の内訳で石油密売などに絡む比率は14年の38%が昨年は25%に低下。半面、住民からの税収は12%から33%に激増した。10%の所得税、最大15%の事業税や道路通行料金、銀行からの現金引き出しの際の5%の手数料や薬品調達での35%課税などが含まれる。支配領域を離れる際は、一時的な外出であっても手数料を要求されるという。
さらにキリスト教徒の住民は「ジズヤ」と呼ばれる身辺保護の特別税の支払いも強いられている。ISISはイスラム教スンニ派。同組織の機関誌はジズヤの実施を誇ったこともある。支配地の住民への課税については、イスラム教で貧困層などへの施しを意味するザカート(喜捨)として正当化している。