英国の「憎悪犯罪」が42%増、EU離脱の国民投票前後
ロンドン(CNN) 英国の警察当局は9日までに、欧州連合(EU)からの離脱を決めた先月23日の国民投票の前後2週間内に国内で発生した、人種問題などが絡むヘイトクライム(憎悪犯罪)の件数は前年同期に比べ42%激増していたと報告した。
英国の全国警察署長委員会によると、調査の対象期間は先月16日から同30日までの間。計3076件が発生し、前年同期比で915件上回っていた。今年の場合、件数の増加が著しいため全国各地の警察は週ごとの統計とりまとめや報告を要請されたとしている。
同委員会によると、発生件数はEU脱退が決まった国民投票の2日後に最も集中し、計289件を記録。その後、下落基調に移ったという。国民投票に絡む議論では増加する移民問題が大きく取り上げられ、EU残留派は離脱派の運動は外国人排斥や偏見に満ちているとの批判も展開していた。
6月の下半期に多かった憎悪犯罪は、嫌がらせ、暴行、暴言、つば吐きや体の強い押し付けなど。
英国の地元メディアによると、同委の今回の声明が発表される前日にはロンドンにある複数のモスク(イスラム教礼拝所)に白い粉末が入った封筒が送り付けられ、パキスタン人への人種差別的な言葉が記されたり、モスクにばってんがつけられた写真も同封されるなどの事件も起きていた。粉末はその後、無害と判明した。また、英上院のイスラム教徒の議員に同様の封筒が送付されたことから議事堂の一部が閉鎖に追い込まれる騒ぎもあった。議員宛ての封筒にも危険がないことがわかっていた。
一方で、英国のソーシャルメディアなどでは少数派との連帯を示すことを狙った運動も現れている。
ロンドンのサディク・カーン市長は8日、市全域の公共輸送網での憎悪犯罪取り締まりの方針を発表。いかなるヘイトクライムも容赦しないとし、被害者は即時に警察へ通報すべきと主張した。同氏はパキスタン移民2世で、初のイスラム教徒の市長となっていた。