日本復興への道のり、CNNが「ユニクロ」の柳井社長にインタビュー
(CNN) 東日本大震災から1年を迎える今、ユニクロの創設者であり、日本で最も尊敬されている実業家のひとり、柳井正氏にCNNがインタビューした。
日本の衣料品企業最大手のユニクロの社長として小売業で大成功を収め、フォーブス誌では日本で最も裕福と紹介された柳井氏。津波から数週間のうちに自身の会社から4億円、さらに個人資産から10億円を救援活動に寄付し、人道主義の一面が知られるところとなった。日本が完全に立ち直るために「何をすべきか」、自身の考えを率直に語る。
以下、インタビュー内容
アンドリュー・スティーブンズ(以下「スティーブンズ」):日本が地震と津波に襲われた昨年3月のことを聞きたい。あの時、何を思ったか。
柳井正(以下「柳井」):このオフィスで仕事をしている時だった。外を見たら千葉方面で石油化学コンビナートが燃えていたので、「これは大変だ」と思った。地震を感じた時は神戸の震災を思い出した。強い揺れを感じたため、当初は東京が震源かと思った。東北地方だと聞き、原発もあるので「非常にまずいことになる」と考えた。
東北出身の従業員が何人か津波で家族を失い、私も悲しみに打ちのめされた。日本人のだれもが、津波のような自然災害の前で人間は無力だと感じたはず。そして、日本が変わらなければならないことにも気付いたのだ。
スティーブンズ:当時の日本人の対応を誇りに思うか。
柳井:被災後の日本人の態度は素晴らしかったと思う。だが政府の対応はひどかった。政府は昨年12月、原発の問題はすべて解決したと宣言したが、詳細は何も公表されなかった。国民をなだめるためにうそをつこうという判断にはあきれる。国民は見くびられている。政府はもっと多くの情報をより詳しく公表するべきだ。
スティーブンズ:日本経済に話を移そう。あなたが大きな成功を収めてきた間、日本経済と実業界は低迷が続いた。日本の産業はどうしてしまったのか。
柳井:日本の現状には大変失望している。経済は過去20年間、ほとんど成長していない。実際、日本人はだんだん貧しくなっている。しかし昨年の震災以来、このままではいけないとだれもが認識するようになった。未来に希望を持って、日本を復興させなければならない。復興とは元に戻すことではなく、政府に頼らずに新たな未来を創造することだ。20年以上も低迷が続いたのだから、考え込んでいる時間はない。ただちに行動する必要がある。