スキンホワイトニングとは肌を明るく見せるために、肌にある色素、メラニンの量を減らす美容の製品やサービスを利用することをいう。
この巨大な産業は、世界のあらゆる地域で主に有色人種の女性をターゲットにしている。
何世紀もさかのぼるこの慣習は、スキンライトニング、ホワイトニング、ブリーチングなど多くの呼び名があり、その文化的な起源も地域によってさまざまだ。だが、このトレンドは究極的にはカラーリズムに根差すものであり、多くの文化で明るい肌が美しさや、雇用、結婚、社会的地位でのよりよい展望と結びつけられている。
世界のスキンホワイトニング市場、それを推進するカラーリズム、こうした製品の背後にある産業、健康に及ぼす影響についてまとめた。
世界のスキンホワイトニング市場
スキンホワイトニングの背景にある文化
明るい肌は長い間、富や地位と結びつけられてきた。ある地域では肉体労働者は太陽の照り付けるなか屋外で労働し、富める者は室内にいた。別の地域では、植民地主義や奴隷制、グローバリゼーションが原因だと専門家は批判する。
カラーリズムや明るい肌の優越性は世界のあらゆる地域で、社会的待遇から結婚の適性、教育、雇用、米国では刑の宣告までを含むあらゆる点で格差につながってきた。
有害なスキンホワイトニングの原料
スキンホワイトニング製品は、美容のために長期間使用したり、医療上の指導なく使用したりすると有害になる原料を含んでいることがよくある。そうした原料には肌を痛めるだけでなく、生涯にわたる病気を引き起こす力がある。
肌を明るくするのに使う化学物質は世界各地でさまざまな種類があり、グルタチオンといった抗酸化物質や注入用に入手可能なビタミンCやコラーゲンなど常に進化している。そうした化学物質の多くは効能が立証されておらず、安全でないことも多い。
3つの原料が、世界中の有害なスキンホワイトニング製品で圧倒的な存在となっていて、大半の国で厳しく規制されている。だが、それでも広く出回っていて、誤った利用や長期間の利用が健康を損なう可能性がある。
スキンホワイトニング製品を製造する企業
スキンホワイトニング製品はそばかすの除去や肌の漂白から、ホワイトナーやライトナーまで進化している。肌の色に関する文化や会話は変わってきているが、製品の需要が減退しないため生産や販売は続いている。
スキンホワイトナーは小規模店舗からスーパーマーケット、高級クリニックまでどこでも買うことができる。市場や第三者の運営するウェブサイト、SNSのプラットフォーム、さらには個人の家から直接購入することも可能だ。
こうした状況のため、製造業者は多国籍の大企業から地元の化学者まで幅が広い。
多国籍企業
- 多くの多国籍企業が、スキンホワイトニング製品としてマーケティングや分類をする幅広い製品を販売している。シミや不均一な肌の色合いをターゲットとしていることが多い。
- こうした製品にはプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、資生堂、バイヤスドルフ、ユニリーバといった巨大企業が含まれる。
- こうした多国籍企業の製造する多くの製品はアジアやアフリカ、中東でのみ販売され、自国市場では販売されていない。
- 過去に展開されたアジアやアフリカでの広告では、肌を明るくすれば、女性が夢の仕事や男性を手にできると描かれていた。
- 企業は次第にブランディングやマーケティングを変化させ、美容産業においてすべての肌の色を包摂することへの要求に対応してきている。
- 「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大事)」運動では、一部の企業はダブルスタンダード(二重基準)への対応に迫られた。企業は、人種的な正義への支持を表明する一方で、スキンホワイトニング製品を販売していた。
- ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は「ニュートロジーナ・ファイン・フェアネス」や「クリーン・アンド・クリア・フェアネス」の販売停止に同意した。
- ロレアルとユニリーバはスキンケア製品から「ホワイト」「フェア」「ライト」という言葉を取り除くと述べた。ただ、第三者が運営するサイトではまだ製品が販売されている。
- ユニリーバは売り上げトップのブランド「フェア・アンド・ラブリー」の名称を「グロー・アンド・ラブリー(Glow & Lovely)」に変えた。だが、まだ製品は流通している。
- (ページを下にスクロールすると、各社からの回答が読める)
製薬会社
- ステロイドやヒドロキノンを含む医薬品は、多くの大手製薬会社が製造している。
- こうした医薬品は合法的な医療上の利用が可能だが、入手の際には大半の国で医師の処方が必要だ。
- だが、こうしたクリームは肌を明るくするといった副作用が原因で、スキンホワイトニングが人気の多くの国で誤った利用や違法な入手が続いている。
より小規模な化粧品会社
- 有害な原料を含むスキンホワイトニングクリームの大半は、パキスタンやレバノン、中国を含むさまざまな国の小規模な企業が製造している。
- 水銀やヒドロキノンといった有害な原料はパッケージに掲載されていることはまれだが、複数の団体による独立した検査では、こうした原料が検出されている。
- 「ゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループ」は定期的にスキンホワイトニングクリームのサンプルを検査し、最大4万ppmの水銀濃度を検出した。
- 水銀やハイドロキノンは数百のスキンホワイトニング製品から見つかっており、パキスタンで製造されている「Shivanya Beauty Cream」「Chandni」「Faiza」「Noor」といった製品が含まれている。
- パキスタンではこうした有毒な原料は化粧品として禁止されている。だが、こうした原料は禁止や規制された国々で利用や販売が続いている。
スキンホワイトニング製品の市場
地元の店舗や市場
- 多国籍企業が製造した商品は世界中、特にアジアの店舗やスーパーマーケットで幅広く手に入る。
- 有害な原料を含む違法製品は密輸され、地元の様々な場所で販売される。化粧品店やショッピングモール、地元のストリートマーケットなどだ。
- 2018年には、英ロンドンのサザーク区が、ロンドン市内のヘア製品・化粧品店で販売されていたスキンホワイトニング製品のうち、検査でヒドロキノンまたはステロイドが検出された1129品を押収した。
- ビューティーウェル・プロジェクトは、米国やケニアのショッピングモール、東アフリカの地元のストリートマーケットで、有害な原料を含む製品を購入することができた。
- 手作りの製品は地域社会レベルでよく売買されている。特に田舎では、村の店舗や人々の家で購入されている。
- こうしたクリームを買う人々は、通常、そうした製品が含む有毒な原料に気づいていない。
オンラインサイトやソーシャルメディア
- インスタグラムやフェイスブックはスキンホワイトニング製品にとって人気の市場だ。
- ティックトックも製品や慣行が推進される主要なプラットフォームになっている。
- 商品や有害な原料を含む製品は、アマゾンやイーベイといった第三者の運営サイトで容易にアクセスできる。
- 活動家はこうしたサイトからスキンホワイトニング製品を排除することを嘆願して成功したことがあるが、その後製品は戻ってきた。
- 有害な原料を含むスキンホワイトニング製品の販売と闘う活動家や機関は、こうしたプラットフォームでの違法製品販売を減らすため、第三者の販売業者に対する責任拡大の呼びかけを支持している。
スキンホワイトニング製品を製造または販売する企業の見解
CNNはこれまで名前の挙がった多国籍企業、第三者の運営サイト、ソーシャルメディアの巨大企業に連絡を取り、スキンホワイトニングの慣行や製品に関する製造、販売、またはプロモーションについて回答を求めた。
多国籍企業
企業に対しては、自社製品のネーミング、自社製品がスキンホワイトニングを促進しているとの批判、美白という理想に関する一般論に関して回答を求めた。
- 資生堂はCNNに対し「我々のブライトニング製品は加齢によるシミやそばかすの原因となるメラニンの組成を抑えることで機能する。こうした製品に肌を白くする力はない。我々はホワイトニング製品を販売しておらず、ホワイトニングを推奨もしていない」と述べた。
- バイヤスドルフはCNNに対し「我々は自社製品の提供およびマーケティング手法の意味合いについて確かめるため徹底した検証を実施し、また広範に及ぶ消費者リサーチを考慮してきた。今後、我々の基盤となる多様な消費者の肌の色を包含しないコミュニケーションをやめていく。自社製品のコミュニケーションに対するこうした対応は、来年(2022年)から徐々に市場で目に見える形となっていくだろう」と述べた。
- バイヤスドルフはまた「多様性と包摂性に関する外部の専門家会議が任命された。ニベアに対して、個別の市場で包摂的な方法で消費者に商品を届けるための最良の道をアドバイスすることが目的だ」とも述べた。
- ユニリーバは「我々は自社のパッケージングやコミュニケーションの刷新で十分な進展があったが、まだ前進の余地がある。消費者はまだ、在庫供給経路などの要因で従来のパッケージングを見たり、第三者のウェブサイトで従来のマーケティング文言を目にしたりする可能性がある」と述べた。
- ユニリーバはまた「我々は異なる肌の色合いの女性を取り上げていく広告方法の展開を続ける」と述べた。
- P&GはCNNからの複数のコメント要請に回答しなかった。
より小規模な化粧品会社
水銀が入っている製品の製造企業に対しては、検査で同社製品に水銀が含まれるとの結果が出たが何か対策をしているのか、そうした製品が違法とされる国にどのように輸入されているのか、高濃度の水銀が人間の健康に深刻な害を与えうることを認識しているのかについて、回答を求めた。
Shivanya、Faiza、Chandni、Noorの各社はCNNのコメント要請に回答しなかった。
ソーシャルメディア企業
ソーシャルメディア企業に対しては、有害で、また違法なことが多い原料の入った製品を含めて、スキンホワイトニングクリームが自社プラットフォームで促進、販売されていることを認識しているかについて、回答を求めた。また、こうしたことを可能にしていることが、カラーリズムを促進し、美白の理想を永続化しているとの批判に対する回答も求めた。
- メタ(傘下にフェイスブックとインスタグラム)はCNNに声明を出さなかった。しかし、安全でない、または違法な商品が自社プラットフォームを通じて販売されないように相当なリソースを投じているとCNNに通知した。
- メタは自社の関連する方針や規制を改善するために、規制当局や他の専門家と協力しているとも述べた。
- ティックトックもCNNに声明を出さなかったが、同社のコミュニティーガイドラインに違反するコンテンツやアカウントを特定、検証し、必要な場合は削除もするために、技術とモデレーションチームを組み合わせて利用していると述べた。
- CNNがスキンホワイトニングの慣行を促進する人物の動画へのリンクを、スキンホワイトニングを可能とする製品とともに伝えたところ、ティックトックはCNNに対し、それは有料広告でなくオーガニックコンテンツであり、ガイドラインに違反しないと述べた。
オンラインサイト
第三者の運営サイトに対しては、有毒で、また違法なことが多い原料が入っているスキンホワイトニング製品が自社プラットフォームで販売されていることを認識しているか、そうした行為を監視したり阻止したりするために何か対策をしているかについて、回答を求めた。
- アマゾンはCNNに対し「第三者の売主は独立した事業主であり、当社ストアで販売用の商品を掲載する場合は、適用法令、規制、アマゾンの方針に従う必要がある」と述べた。
- 同社は「当社の方針に違反した者はアカウントの削除の可能性を含む対応の対象となる」とも述べた。
- アマゾンは、こうした製品の一部を販売しているとCNNが指摘したページを削除した。
- イーベイはCNNに対し「法令を順守する商品だけがイーベイへの掲載を許される。ヒドロキノンまたはステロイド、水銀を含むあらゆる製品が禁止されている」と述べた。
- イーベイとアマゾンには追加の質問で、製品が各社の監視をくぐり抜けた理由を尋ねたところ、アマゾンはCNNに回答しなかった。
- イーベイは「イーベイは悪い行為者による回避行為への対抗措置を継続的に更新している。イーベイが悪い行為者を特定した場合、我々のセキュリティーチームが掲載を削除し、行為者に対して厳しい措置をとる」と述べた。
- イーベイは、こうした製品の一部を販売しているとCNNが指摘した掲載を削除した。