英国を拠点に活動する正体不明のアーティスト、バンクシーの絵画３点が英ロンドンでオークションに出品され、総額２９０万ドル（約３億円）で落札された。収益はパレスチナの病院のために寄付される。
油絵３枚で構成される「地中海の風景２０１７」の連作は、２８日のサザビーズのオークションに出品された。美しい海岸に救命ジャケットや救命ブイが打ち上げられた光景は、欧州の難民や移民が直面した危機を表している。
サザビーズはこの作品について、「１８世紀～１９世紀に描かれた『自然崇高』の絵画を装いながら、見る者の期待に反して困難な現代的問題を突き付けた」と解説する。
海岸に救命道具が打ち上げられた光景は地中海を渡ろうとする無数の難民を表している/Banksy/Courtesy of Sotheby's
２０１０年代は、数えきれないほどの難民や移民が武力衝突や社会不安から逃れるため、船やゴムボートで地中海横断を試み、数千人が航海の途中で命を落とした。移民危機には２０１９年３月に収束宣言が出されたが、今も危険な航海を試みる難民は後を絶たない。
バンクシー作品の落札価格は、事前に予想されていた１００万～１５０万ドルを大幅に上回った。
作品は２８日に行われたサザビーズのオークションで出品された/Banksy/Courtesy of Sotheby's
この作品は、バンクシーが２０１７年にパレスチナ自治区のベツレヘムで開業した「ウォールド・オフ・ホテル」のロビーに飾られていたもので、パレスチナの子どもや障害者を支援する非営利組織「ＡＢＣＤベツレヘム」に寄贈された。
オークションの収益金は、パレスチナ自治区で医療サービスを提供する団体の病棟建設や、子どものためのリハビリテーション機器の調達に充てられる。
