(CNN) オープンAIが最も高度な人工知能(AI)画像ジェネレーターを公開してからわずか数日後、スタジオジブリの作品を模倣した画像がSNSにあふれた。この傾向はAIの威力とそれがもたらす著作権上の懸念を示している。
25日に公開された「GPT―4o」の最新アップデートでは、テキスト解釈の正確性が向上し、より詳細で複雑なプロンプトに従う機能など実用的な進化が数多く盛り込まれている。ただ、オープンAIのウェブサイトの記事によると、このアップデートは「さまざまな画像スタイル」で長時間訓練されており、「サウスパーク」から古典的なクレイアニメまで人気のアニメをほうふつとさせる静止画や動画を生成してユーザーを驚かせている。
しかし、X(旧ツイッター)とインスタグラムではある作風がすぐにあふれかえった。「ChatGPT(チャットGPT)」(およびオープンAIのテキスト動画変換サービス「Sora」)のユーザーが「千と千尋の神隠し」や「ハウルの動く城」などの作品で人気のジブリスタジオの作品を模倣し始めたのだ。

「千と千尋の神隠し」(2001年公開)のハクと千尋/Walt Disney Pictures/Everett Collection
中にはポップカルチャーや政治のシーンをジブリの作風で再現したものもある。「ロード・オブ・ザ・リング」の予告編のリメイクや「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」の場面、トランプ米大統領とバンス副大統領がウクライナのゼレンスキー大統領とホワイトハウスで口論となった会談シーンなどだ。
特に拡散された投稿のいくつかが人気のミームにジブリ風のひねりを加えたものだったことに驚きはない。例えば、「distracted boyfriend(気を取られた彼氏)」や「bro explaining(説明する男友達)」(記事冒頭の画像)といったミーム、俳優ベン・アフレック氏が喫煙している悪名高い画像などだ。ほかにもXではイーロン・マスク氏がカトラリーで遊んでいる様子を描いた画像も話題になった。これはニュージャージー州でトランプ氏が主催した夕食会でマスク氏が指でスプーンのバランスを取っている様子を捉えた最近の動画に基づいている。
一方で、スタジオジブリの共同創設者である宮崎駿監督がAI生成アートを「生命に対する侮辱」と表現した2016年の動画も広く共有されている。宮崎氏は、フレームごとに丹念に作り込まれた手書きのアニメーションで知られている。
同氏はこの動画の中で、テキストのプロンプトを使用して生成されたモンスターキャラクターの動画について「極めて不愉快」と述べたうえで、「そんなに気持ち悪い物をやりたいなら勝手にやっていればいいだけで、僕はこれを自分たちの仕事とつなげたいとは全然思わない」と切り捨てた。

映画芸術科学アカデミー主催のガバナーズ賞授賞式で写真撮影に臨む宮崎駿監督=2014年、カリフォルニア州ロサンゼルス/Kevork Djansezian/Reuters/File
オープンAIのアップデートされた画像ジェネレーターは、AIとアートの役割をめぐる議論も再燃させている。数週間前には、AIアートのみを対象とした初のオークションを中止するよう競売会社クリスティーズに求める公開書簡に4000人近くが署名した。この背景には、生成デジタル作品の作成に使用されたプログラムが著作権で保護された作品で訓練され、人間のアーティストを搾取しているという懸念がある。
オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)はこの流れを軽視。Xで、「がんの治療などのために超知能を実現しようとしてきた10年」を経て、スタジオジブリの画像が自分の仕事への関心を一気に高めたと冗談を飛ばした。
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原文タイトル:Viral Studio Ghibli-style AI images showcase power – and copyright concerns – of ChatGPT update(抄訳)