(CNN) 生活費が高騰し、セレブは現実離れしていると非難されがちなこの時代に、ある一流スターがようやく一般人とのつながりを築くことに成功したようだ。エマ・ストーンは16日夜、ポップコーンをいっぱいに詰めこんだポケットが二つ付いた赤いホルターネックのドレスを着て登場。何千人もの人々に、こっそり映画館でスナック菓子を食べているのはばれていると感じさせた。
団結の瞬間は、NBCの番組「サタデー・ナイト・ライブ」の50周年記念イベントで訪れた。ストーンは夫のデイブ・マッカリーとともにレッドカーペットに姿を見せた。ストーンがよろよろと登場すると、腰のあたりからポップコーンがこぼれ落ちた。床まで届く深紅のドレスはルイ・ヴィトンの特注品だが、ルイ・ヴィトンがポップコーンを念頭にドレスの深いポケットをデザインしたかどうかは不明。ストーンはハンドバッグではなく、ポップコーンが入ったキャンディーストライプ柄の箱でそのルックを完成させた。そしてもちろん、食べた。
それは、ロエベのランウェーにありそうな、驚くべき不遜さだった。ファッションは、JWアンダーソンの頭脳からそのまま飛び出した、シュールレアリスム(超現実主義)的な結末へと導かれたのだ(同氏はバースデーキャンドルやマニキュアのボトルをヒール代わりにしたストラップ付きパンプスを編み出した)。このようなファッションの遊び心は、レッドカーペットかいわいからは常に排除されてきた。レッドカーペットでは、ドレスは真剣に扱われ、出席者の中には博物館に収蔵されるレベルの品を着る人もいる。
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ストーンが通ったあとにはポップコーンが散らばっていた/Evan Agostini/Invision/AP
ストーンのルックは、ファッションとコメディーの珍しい融合だった。また、女性のファッションにはほとんど見られることのない、より機能的な装飾も取り入れていた。それはポケットだ。17世紀、男性服は縫い付けられたポケットを備えるまでに進化したが、女性服は外側にくくりつけるタイプのポケットにとどまっていた。大事な物を持ち歩く必要があるのは男女問わずだが、ドレスの裏地にポケットが取り付けられるまでには何年も要した。実際、ポケットが普及するよりも前にハンドバッグが発明され、改良されていった。
今日でも、ポケットの欠如は議論を巻き起こしている。X(旧ツイッター)では10年以上にわたり、実用的なポケットの追加を求めるハッシュタグが盛り上がりをみせている。2020年、あるユーザーは「最大のジェンダー不公平は見せかけのポケットだと断言する」と書き込んだ。「#WeWantPockets(私たちはポケットが欲しい)」はネット上の主張にとどまらず、アパレル業界に今も充満する不平等を女性が強調する方法でもあったのだ。
それでも、女性向けポケットにはいくつかの重要な進歩があった。エルザ・スキャパレリは、第2次世界大戦時代にガスマスクを携帯できるほど深いポケットを備えたディナージャケットをデザインした。故エリザベス女王は19年、白いツイードドレスのポケットに手を入れ、くつろいだ様子で写真に収まったことで保守派の物議を醸した。今回、ポケットの歴史には、もう一つの脚注が追加された。ストーンとおやつの隠し場所。
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原文タイトル:Look of the Week: Emma Stone’s latest dress is made for sneaking snacks into the movies(抄訳)