（ＣＮＮ） 米カリフォルニア州の焼け付くような日差しにもかかわらず、韓国ガールズグループＢＬＡＣＫＰＩＮＫ（ブラックピンク）のリサは１１日、大きな黒のダウンコートをまとってコーチェラ・フェスティバルのメーンステージに姿を現した。数分後には巨大なコートは脱ぎ捨てられ、頭から足先まで鱗（うろこ）で覆われた爬虫（はちゅう）類風のボディースーツがあらわに。衣装を手掛けたアッシャー・レビーン氏はロサンゼルスのスタジオからビデオ通話で取材に応じ、「彼女は爬虫類の悪役だね」「まさにクリーチャー・クチュールだ」と語った。
レビーン氏はこれまで、レディー・ガガやグレース・ジョーンズ、ドージャ・キャット、クリスティーナ・アギレラ、グライムスの幻想的なステージ衣装を手掛けてきた。コーチェラに使うリサのハイテク衣装２点の製作を電話で依頼されたのは、本番まで１カ月を切ったタイミング。イベントを前にしたＣＮＮのインタビューで「ここ１週間半、昼夜を問わず作業を続けてきた」「昨夜はこのインタビューに備えて早めに就寝したんだ」と振り返った。
カスタムメイドの３Ｄ爬虫類スーツを作るにあたり、レビーン氏はまずリサの体をスキャンし、正確な体形データを取得した。そのデータをデジタルの仕立てシステムに取り込み、リサのバーチャルアバター上でドレーピングと生地の調整を行った後、衣装の製作に入った。次はＡＩ（人工知能）を駆使し、独自の幾何学的な鱗模様のプリントをデザイン。２次元の生地デザインをスタジオの造形部門に渡して、トカゲの絡み合う鱗を模した鱗板を一枚一枚、手作業で製作した。レビーン氏は「皮革業界の破壊者」を自認しており、いつの日か革製品やワニ革などのエキゾチックレザーを動物の犠牲なしで生み出したい考えだ。
レビーン氏はリサのためにカスタムメイドの３Ｄ爬虫類スーツを製作した/Courtesy Asher Levine
「もう動物を殺す必要はない」「そこから先へ進化できる」（レビーン氏）
デジタルツールによる支援があったとはいえ、この爬虫類風コスチュームの製作には何日もの細かい作業を要した。リサの肩に取り付けられた半透明の鱗や角のような装飾など、最も小さいパーツですら、製作にそれぞれ５０〜６０時間かかったという。
発光するインスピレーション
リサの２着目のステージ衣装は、青やピンクに発光する３Ｄプリントの蔓（つる）があしらわれた、幻想的な半透明のキャットスーツだった。これについては自然界の別の領域から着想を得た。
「生物発光する昆虫や、傘に光る脈が走る半透明の菌類を数多く参照した」とレビーン氏。「人類は何千年もの間、花やアニマル柄といった自然界のモチーフを身に着けてきた。だが今、私は『エキゾチック２．０』とは何だろうと考えている」
レビーン氏にとって、このアプローチは太古の生物と近未来的なテクノロジーを融合することを意味する。これは以前、３億年前に絶滅した魚「ダンクレオステウス・テレリ」に着想を得たクラッチバッグ「テレリ」でも実践した方法だ。
「私がデザインでやりたいのは、架空のキメラのような生物を作り出し、そのキャラクターを新たに進化させて、エキゾチックな存在へと拡張することだ」（レビーン氏）
リサの２着目のステージ衣装は生物発光する昆虫や、半透明の菌類に着想を得た/Courtesy Asher Levine
リサが身につけた２０本ほどの発光する蔓には、それぞれ光ファイバーの光源が仕込まれており、地球外生物のような光を放っていた。
「衣装に光を埋め込む試みは２０１１年に始めた」とレビーン氏は語り、グラミー賞アーティストのウィル・アイ・アムとの約１０年前のプロジェクトを振り返った。「彼から『服に照明を埋め込むことはできる？』と聞かれたので、私は大いに乗り気で『うん、やってみよう』と答えたんだ」
以来、レビーン氏はガガやアギレラ、グライムスに様々なステージで軽量の照明装置を仕込んだ衣装を提供し、柔軟性がありながらガラスのように見える素材を用いて光を埋め込む技術を完成させた。リサがコーチェラのパフォーマンスで着用したのは、透明な花びらを胸元に並べたもので、「見た目はガラスだが、革のように曲がる」とレビーン氏。カメラに向かって花びらを掲げ、手で動かしながら実演してくれた。「これは（ＳＦ映画）ブレードランナーが予言した未来だ」
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原文タイトル：Exclusive: Meet the designer behind Lisa’s reptilian Coachella look（抄訳）
