顔認識システムが切り開く世界 捜査や小売りに新基軸
こうした新技術の用途は、犯罪者やテロリストの特定にとどまらない。潜在顧客の発掘や支払い方法の簡略化など、消費の現場への応用も期待されている。
例えば大型小売店では、入店と同時に顔認識システムが作動し、店側のもつ既存の大口顧客情報と照合されるようになる。照合の結果、見込み客と判定されれば、手元のモバイル端末を通じて店員に通知される仕組みだ。また、支払いの場面では、顔認識システムにより自動的に決済が行われるようになるだろう。
いずれも鍵となるのは、利便性とプライバシー保護のバランスだ。関係者は、享受できる利便性がプライバシーへの懸念を上回れば、消費者の側からすすんで個人情報を提供するようになるだろうとみている。
とはいえやはり、誰もが諸手をあげて顔認識システムに賛成するわけではない。
米SNS大手フェイスブックは2011年、自社サービスに顔認識機能を導入して物議をかもした。アップロードされた写真の顔に「タグ付け」する機能で、これによりネット上の知人を自動的に識別できる。このサービスは大きな波紋を呼び、欧州連合(EU)当局が調査に乗り出す騒ぎとなった。
一連の問題について、米電子プライバシー情報センターのエイミ・ステファノビッチ氏は「いくら企業がプライバシーを守ろうとしても、個人情報を収集している時点で、政府の捜索に対して脆弱(ぜいじゃく)になってしまっている」と警鐘を鳴らした。