プーチン氏、極超音速ミサイル搭載の軍艦を派遣 ロシア国営メディア
(CNN) ロシアのプーチン大統領が、同国で最も近代的な軍艦の1隻を長距離の航海に派遣したことがわかった。極超音速ミサイルを搭載したこの艦は、大西洋や地中海、インド洋を航行する予定。ロシアの国営メディアが4日に報じた。
当該のフリゲート艦「アドミラル・ゴルシコフ」は、ロシア北部の港湾を4日に出発した。港湾の地名は明かされていない。タス通信の報道によるとプーチン氏はこれに先駆け、同艦の艦長やショイグ国防相とビデオ通話で協議していた。
プーチン氏は同艦が極超音速ミサイルシステム「ツィルコン」を搭載していると強調。ツィルコンは音速の5倍を超える速さで飛行するため、探知や迎撃がより困難になる。
ロシアは2021年後半にツィルコンの発射試験を行った。ロシア北西部の白海でアドミラル・ゴルシコフから発射し、当時の報道によれば400キロ先の標的に命中させたという。
戦闘も想定される状況でツィルコンが配備されるのは今回の任務が初めて。
ロシアが10カ月目に突入した隣国ウクライナとの戦争にツィルコンを投入するのかどうかは不明。タス通信の報道でもこの戦争に関する具体的な言及はない。
ツィルコンがロシアの主張通りに機能するとすれば、恐ろしい兵器となる。ただアドミラル・ゴルシコフに搭載したツィルコンをウクライナ国内の標的に対して使用するのは、兵站(へいたん)上の困難が伴う。
ロシアから見たツィルコンの最適な射程は、ウクライナの南に位置する黒海から発射した場合となるが、アドミラル・ゴルシコフが黒海へ到達するにはトルコが管理するボスポラス海峡を通過しなくてはならない。トルコ政府は戦争の初期から、外国の艦船によるそうした通行を許可しない方針を示している。
アドミラル・ゴルシコフは、理論的には地中海の北の海域からでもツィルコンを発射できるものの、その場合ミサイルはウクライナに到達するまでに北大西洋条約機構(NATO)に加盟する複数の国々の上空を飛行することになる。それはロシアによる侵攻の著しい拡大とみなされる可能性がある。
米海軍の退役大佐でアナリストのカール・シュスター氏は、アドミラル・ゴルシコフの配備について、プーチン氏にとっては軍事面と同様に政治的な声明でもあると指摘。「プーチン氏はロシアが依然として世界的なプレーヤーであることを誇示しようとしている。自身によるウクライナへの侵攻で代償が生じ、各国から激しい非難を浴びているにもかかわらずだ」と述べた。