ハダカデバネズミ、酸素がなくても18分間生存 医学への応用にも期待
(CNN) 東アフリカに生息するハダカデバネズミというネズミの仲間は、酸素がなくなっても体内のエネルギー供給の仕組みを切り替えて、18分間生存できる――。ドイツなどの研究チームがこのほど、米科学誌サイエンスにそんな研究結果を発表した。
ハダカデバネズミについてはこれまでの研究から、体温が低く、がんや痛みに対する耐性を持ち、普通のネズミの10倍もの寿命を持つことが分かっている。
野生のハダカデバネズミは、地下の狭い巣穴に200匹ほどが集まって集団で生息する。このため研究チームでは、どの程度まで酸素が少ない環境に耐えられるか調べる目的で、まず酸素濃度5%の環境で実験を行った。
人間の場合、酸素濃度が10%を切れば死亡する。しかしハダカデバネズミは酸素濃度5%の環境に数時間置かれても、ほとんど影響は表れなかった。
そこで次は酸素濃度をゼロにしたところ、ハダカデバネズミはすぐに動きを止めて昏睡(こんすい)のような状態になり、18分間生き続けた。再び酸素を注入するとすぐに回復し、長期的なダメージは一切なかったという。
この間のデータを解析した結果、ハダカデバネズミは酸素を必要とするブドウ糖を使った代謝系から、酸素を必要としない果糖を使った代謝系に切り替えて、脳や心臓といった臓器の細胞が生きるために必要なエネルギーを供給し続けていたことが分かった。
研究チームによると、ハダカデバネズミは遺伝子的には普通のネズミとよく似ており、人間と全く異なるということもないという。
「人間にも果糖からエネルギーをつくり出す能力がある」と研究者のギャリー・ルーウィン氏は指摘。「問題は、酸素の供給が低下した時に果糖を使った代謝系に切り替える方向へと、人体を近づけられるかどうかだ」と解説する。