ANALYSIS

欧州の小国リトアニア、台湾を巡り中国と渡り合う

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昨年11月18日に撮影されたリトアニアの台湾代表事務所のロビー/Petras Maluka/AFP/Getty Images

昨年11月18日に撮影されたリトアニアの台湾代表事務所のロビー/Petras Maluka/AFP/Getty Images

「中国は教訓を学ぶ必要がある」

1990年、リトアニアはソビエト連邦の構成国で最初にモスクワの共産党からの独立を宣言した。その後はEUと北大西洋条約機構(NATO)に加盟したが、それはまさに社会主義国の拡大に対するチェックの役割を担う機構だった。

この文脈から見れば、台湾に対する敵意を含め、自国の領域に敵意を示す――同様に欧州の小国に対して貿易を武器として使う――中国のような国は、ソビエト時代の生活を記憶する国々にとって自然と警戒心を抱かせる存在となる。

リトアニアのクビリュス元首相はCNNに対し「中国は教訓を学ぶ必要がある。なぜなら、これまで彼らが我々の価値観やルールに沿わない方法で振る舞うことが許されていたのは、単に彼らがとても金持ちだったからだ」と語る。

「より大きなEU加盟国が、これについて自分事として立ち上がっていただろうとは思わない。もしかしたらこれはリトアニアが起点となって他国に広がり、やがては欧州が我々の基準に満たない国に対して団結して立ち向かうという流れになるのかもしれない」(クビリュス氏)

リトアニア当局が他国よりもこうした姿勢を取りやすかった理由の一つは、輸出先に占める中国の割合が小さいことだ。貿易データを視覚化する経済複雑性観測所によれば、リトアニアの輸出先のうち、中国は近年最も輸出が伸びている国の一つであるものの、その割合はロシア(13.1%)や米国(3.64%)に比べるとわずか1.18%にとどまっている。

リトアニアにとって、強硬路線の姿勢は道徳上の使命を果たす以上の意味を持っている。当局者はCNNに対し、中国に対抗することで、ロシアに対してメッセージを発することを期待していると語る。

オーストリア欧州安全保障政策研究所(AIES)の代表ベリナ・チャカロバ氏は、リトアニアは「NATO加盟以降、常にロシアからの圧力にさらされている。リトアニアは、中国やロシアの独裁体制に誰も屈しはしないというEU加盟国内の前例を作ろうとしている」と語る。

リトアニアの当局者はCNNに、中国に立ち向かうことで、独裁体制を押し返すEUの前例を作ることになるかもしれないと語る。リトアニアのある外交高官は、欧州により効果的な抑圧への対抗措置を持たせることが戦いの大詰めになると語った。

EUは最近、ある法的メカニズムを提案した。それはEUが経済的な脅しに対して「組織化された、一様な方法」で対抗することを可能にし、「状況ごとに応じた、相応な対応」を講じるものだ。関税や輸入制限、EU内部市場へのアクセス制限といった手段を含みうるものとなる。

だがEUに加盟する多くの小国は、他の加盟国――特に中国と大規模な貿易をしている国――がいざとなったときにこれを支持するのかどうか、懐疑的な考えを内々に抱いている。

中国との強固な経済関係は「戦略的自立」を目指すEUの運動の重要な柱となっている。戦略的自立とはEUが使う用語で、EUが地政学上のパワーとして米国の影響からの独立色を強めることを意味する。この考え方は、欧州が中国と経済的に連携することで、米中間で押しつぶされることなく、両国間の架け橋として動くことができるというものだ。

フランスをはじめとする大国の加盟国は、この戦略的自立を強力に支持している。欧州の政治家は中国によるウイグル族イスラム教徒に対する扱い、香港の民主主義抑圧、台湾に向けた敵意に不快感を募らせているが、お金の話になると中国を遠ざける準備が十分できていない国が多数の状況にある。

チャカロバ氏は、「リトアニアは中国を論争に引き込むことで、欧州における米国の立場を強めようとするとともに、EUやその主要加盟国(ドイツとフランス)に中国との二国間関係から生じる将来的なリスクや危険性を警告しようしている」との見方を示す。

詰まるところ、リトアニアはこうした国々に声を上げさせたいと考えている。だが、そううまくいくだろうか。

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