客室乗務員出身のJAL鳥取社長、女性トップの増加望む

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日本航空(JAL)の鳥取三津子社長=24日/Daniel Campisi/CNN via CNN Newsource

日本航空(JAL)の鳥取三津子社長=24日/Daniel Campisi/CNN via CNN Newsource

東京/香港(CNN) 日本航空(JAL)の鳥取三津子社長は、自分のような女性を最高経営責任者(CEO)にするために日本がすべきことはまだまだたくさんあると認めている。

鳥取氏は1月、JAL初の女性社長兼グループCEOに任命され、約40年前に入社し客室乗務員として歩み始めたキャリアの頂点に達した。

同氏の昇進は、女性が昇進する上でいまだ大きなハードルに直面している日本においてまれにみる功績だ。

同氏は24日、東京にあるJAL本社で行われたCNNのインタビューで、「そもそも国としてももっと女性管理職を増やそうという目標を持ってやっているくらいなので日本全体が女性管理職自体もまだまだ少ないと思う」と述べた。

同氏はさらに「本気でこれからもっと管理職をまず増やすことと、女性本人が活躍したいと思う、ここがすごく大きいのではないかと思う。これからもっともっと増えていくことを切望しているし、女性が社長になったと驚かないような日本に早くなるといいなと思う」と続けた。

現在59歳の同氏は1985年に入社。それから30年後の2015年に客室乗員室長に就任し、順調に昇進を重ねた。

同氏の経歴は先人たちとは大きく異なる。客室乗務員出身者が経営トップに上り詰めることは極めて珍しい。直近10人の社長のうち7人は東京大学を卒業している。鳥取氏は長崎県にある活水女子短期大学出身だ。

鳥取氏の前任者は航空整備技術者、その前の社長はパイロットだった。

機内電話を使用する鳥取氏の写真(1985年撮影)。鳥取氏は客室乗務員としてキャリアを歩み始めた/Courtesy Japan Airlines
機内電話を使用する鳥取氏の写真(1985年撮影)。鳥取氏は客室乗務員としてキャリアを歩み始めた/Courtesy Japan Airlines

JALが鳥取氏を上級職に昇格させた理由の一つは、「キャリアによって培われた安全な運航とサービスに関する高い見識と現場経験」であり、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)時には「安全運航の維持に大きく貢献した」

鳥取氏は4月1日付で社長に就任した。1月2日に羽田空港で起きた516便の衝突事故の影響や、米ボーイングの安全上の懸念に対処している中での船出となった。

  
      
日本航空機、羽田空港に着陸後に炎上

重大事故

羽田に着陸したエアバスA350旅客機が滑走路で海上保安庁の航空機と衝突し、海保機の乗組員5人が死亡した。JAL516便に搭乗していた379人全員が無事に避難。乗員の迅速かつ冷静な対応が称賛され、安全規定の素晴らしさに注目が集まった。

鳥取氏は事故の様子をテレビで見ていたといい、乗員と乗客の迅速な避難をたたえた。

同氏は「まず、お客様のご協力は大変大きかったと思う。乗務員の指示に本当に冷静に従ってくださった。これは一つ大きかったと思う。それからやはり(安全)訓練の成果がそのまましっかり実現できたということが大きかったと思う」と語った。

鳥取氏は安全を大切にすると話す。同氏が入社した年、東京発大阪行きのJAL123便が群馬県御巣鷹山で墜落。乗客524人のうち520人が死亡するという、航空史上最悪の単独事故が発生した。

航空業界を調査するエンダウ・アナリティクスのシュコル・ユソフ氏は、航空業界では安全が最優先であり、鳥取氏の経験は規定を改善するのに役立つだろうと述べた。

ユソフ氏は、日本は先進国を含めた多くの国と比べて優れた「安全文化」を持っていると話す。JALは1985年の御巣鷹山墜落事故と2024年1月の羽田空港衝突事故を起こしているが、女性、特に客室乗務員として実績のある女性ならJALのすでに高い水準の安全規定を向上させることができると思うと語った。

ジェンダーギャップ

鳥取氏の任命は、JALが顕著な男女格差に対処し、トップ企業における多様性を強化しようと取り組む中で行われた。

世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数2023年」において、日本は146カ国中125位。前年から九つ順位を下げ、先進7カ国(G7)を大きく下回っている。

アジア地域でみると日本はミャンマーとフィジーを下回り、最下位だ。

ジェンダーギャップレポートによると、23年の時点で女性が上級職や経営幹部に占める割合は12.9%に過ぎない。

鳥取氏は1月、キャリアのステップに悩んだり、ライフイベントを経験したりしている女性社員がいると話した。自分の社長就任によって、こうした社員らに次の一歩を踏み出す勇気を与えたり、背中を押したりできることを願っていると語った。

政府は30年までに大手上場企業の上級管理職に占める女性の割合を30%にすることを目指しており、女性登用のための流れを作る取り組みを支援するとしている。

しかし、内部からの変化は遅い。

静岡県立大学経営情報学部の竹下誠二郎教授は、日本の企業は経営幹部に登用する女性の候補を確保するために十分なことをしていないと言う。

一方で、伝統、慣行、文化は打破することが難しいが、その中で女性が日本を代表する企業の社長になることは非常に前向きな兆候だと続けた。

同氏は、鳥取氏の就任は、特に彼女が 「非エリート」の道を歩み昇進を重ねていったことを考えると世間や利害関係者から「非常に肯定的」に捉えられるだろうとし、客室乗務員が社長になることは非常に肯定的に受け止められるだろうと語った。

同氏は、特にJALの従業員は他社の社長や官僚出身者、元政治家よりも自分たちの「同志」が社長になることを望んでいるだろうと続けた。

ユソフ氏によれば、JALは新型コロナウイルス感染症のパンデミック後、観光客の日本への関心が高まり大幅に業績が回復したという。

同氏は「国内で競合する全日本空輸(ANA)も同様に好調だ。実際、円安が続いていることは観光客にとっては好材料だが、一方で海外に出向く日本人は減っている」と続けた。

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