生命につながる有機分子、土星の衛星に存在 NASA
(CNN) 土星の衛星タイタンの観測データから、生命につながるかもしれない物質の存在が確認されたとして、米航空宇宙局(NASA)などの研究チームが科学誌サイエンス・アドバンシスにこのほど論文を発表した。
研究チームは、チリにあるアルマ望遠鏡でタイタンを観測したデータを分析。その結果、細胞膜のような球体を形成できる複雑な有機分子のアクリロニトリルが、相当量検出された。
タイタンの大きさは月や水星よりも大きく、太陽系の衛星の中では唯一、雲があって、窒素とメタンの濃厚な大気のためにオレンジがかった色にかすんで見える。
気圧は地球より60%高いことから、もし生命が存在できたとしても、形態はやや異なるかもしれない。それでもタイタンの大気は、生命が存在していた原始の地球の大気とそれほど大きな違いはない。
地表には液体エタンやメタンの川や湖や海があり、そこから形成された雲が液体ガスの雨を降らせる。
地表の温度はおよそ氷点下180度と極めて低いため、地球上で岩石や溶岩が地形を形成するように、メタンによって川や湖が形成されている。そうした環境がアクリロニトリルの分子を互いに結合させて、細胞のような膜の形成を促す可能性がある。
「液体メタンの環境におけるアクリロニトリルの存在は、地球上の生命にとって重要な役割を果たしたものと類似する化学反応の可能性をうかがわせる」。NASAゴダード宇宙飛行センターのモーリン・パルマー氏はそう解説している。