太陽よりも輝く「石」 化石燃料時代の終わりを告げるか
アントラは、企業家のビル・ゲイツ氏を含む投資家から8000万ドルの創業資金を集めた。しかし、主な競争相手は、やはりカリフォルニア州のベイエリアに本社を置く新興企業のロンドだ。ロンドはたくさんの耐火れんがを使っており、重量では炭素よりも安いが、エネルギー密度はそれほど高くない。ロンドは、アントラよりも多くの資金を集めており、最初のバッテリーは、カリフォルニア州のエタノール工場で商用の電力を生産している。
ロンドのジョン・オドネルCEOはCNNの取材に対し、「発熱体からの見えない光、赤外線でれんがを直接加熱できる画期的な方法を開発した」と説明。第三者による報告によって、その素材が100年間持つことがわかったという。
プリンストン大学のジェシー・ジェンキンズ教授(工学)は「両社とも熱と電力の貯蔵を行っている。柔軟な役割を果たす水素のように、私が最も楽観視しているのは、このような長期的な貯蔵技術だ」と述べた。
ロンドのコンサルタントも務めるジェンキンズ氏によれば、石の利用は、電力を蓄えることができても熱を蓄えることができない化学電池よりも明らかに有利だという。
アントラとロンドのCEOは、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)に参加した。ポネックさんもオドネルさんも自分たちのアイデアへの関心や、クリーンエネルギーにおけるさまざまな画期的な飛躍的進歩に心躍らせて帰国した。
「もし、5年前や10年前に尋ねられていたら、こう答えただろう。『脱炭素化に必要なものが全てそろっているかどうかはわからない』と。しかし、今日、我々には必要な道具がある。あとは、それを展開するだけだ。移行は避けられない。かならず起きる。非公開の場で化石燃料業界の人々と話をしても多くの人が同じことを言うだろう」(ポネックさん)