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世界中で米国より多くの銃乱射事件が発生する国はない。あまりにもありふれた米国の現実の一部を紹介する。
2016年の研究によれば、1966年から2012年にかけて起きた世界の銃乱射事件の約3分の1が米国で発生した。この研究では「銃乱射」について、下記の米連邦捜査局(FBI)の定義を使っている。研究は292件の事件について調査し、このうちの90件が米国で起きたことが分かった。言い換えれば、米国の人口は世界の5%だが、そこで全ての公共の場で発生した銃乱射事件の31%が起きているということだ。
政府は単独のカテゴリーとして「銃乱射」を定義したことがない。そのため、どの非公式な定義を使うかによって集計は大きく変化する。銃による暴力について情報収集を行っているウェブサイト「ガン・バイオレンス・アーカイブ」によれば、「銃乱射事件」は4人以上の死傷者が出た事件を指す。この数には銃撃犯も含まれる可能性がある。この定義によれば、2016年は最初の164日間に136件の銃乱射事件が発生していることになる。
政府が採用するいくつかの用語の使い方を見てみよう。連邦法では、3人以上の死者が出た事件を「大量殺人」と定義している。FBIが2013年まで使っていた、一般的に受け入れられている定義では、4人以上の死者が出た銃撃事件を指す。議会の報告書では、ギャングが関連した事件や家庭内の事件は除かれる場合があり、そこでは「犠牲者を無差別に選んだ銃撃犯」に力点が置かれる。これに基づくと、全ての集計はひとけたにまで減る。
今回のオーランドの銃乱射事件は米国史上で最も死者数の多い銃撃事件だった(死者49人)。2007年に起きたバージニア工科大銃乱射事件(死者32人)や2012年のサンディフック小学校銃乱射事件(死者27人)から10年と離れていない。実際、1949年までさかのぼった死者数上位30件の銃撃事件のうち16件が過去10年のうちに起こっている。
2013年のデータによれば、銃乱射事件の10件中7件が学校や職場で起きていた。米国で最も知られている銃乱射事件は、サンディフック小学校やコロンバイン高校、バージニア工科大、サンバーナディノのインランド・リージョナル・センターなどで起きている。海外ではこうした事件は基本的に軍事施設の近くで起きている。
「アクティブ・シューター」による銃撃事件の約70%は銃撃犯が死亡して終わる。「アクティブ」というのは法執行機関や市民の対応が事件の結果に影響を及ぼす可能性がある側面を示している。
銃器販売のための身元調査の件数に関するFBIのデータは需要のパターンに関して多くのことを教えてくれそうだ。こうしたパターンは世間の注目を集める銃乱射事件の直後、銃規制についての公共の場での議論が盛んになったときに上昇する傾向がある。最近、身元調査の件数が最高を記録したのは、月別では2015年12月のサンバーナディノの事件後だった。しかし、16年は15年の記録を上回るペースで推移している。
スイスに拠点を置く銃器関連の情報センター「スモール・アームズ・サーベイ」の2007年の調査によれば、米国市民は約2億7000万丁の銃を保有している。これは、インドネシア国民全員に1丁ずつ銃を持たせてもまだ余りが出る量だ。そして、1人当たりの銃器の数としては米国が1位だ。そしてまた、米国の銃乱射事件の半数以上で、銃撃犯は2丁以上の銃器を保有していた。世界的に見ると、銃撃犯はたいてい銃を1丁しか持っていない。
銃器への需要が急増すると、銃器の販売業者とメーカーのビジネスも栄える。スミス&ウェッソンの株価は2015年のサンバーナディノ銃乱射事件の後で急騰した。実際、過去8年間の株価の動きは、アップルやグーグルのような人気のIT企業の株価よりも劇的な割合で上昇した。