憎悪犯罪の報告件数、昨年は過去12年で最多 米FBI
(CNN) 米連邦捜査局(FBI)は28日までに、昨年報告された犯罪要件を満たすヘイトクライム(憎悪犯罪)は7700件以上に達し、2008年以降では最多となったと発表した。
19年比では約450件の増加。FBIが毎年作成する憎悪犯罪統計の改訂版で報告した。08年は計7783件だった。
今回の報告書によると、アフリカ系(黒人)を狙った件数は前年の1972件から2871件に、アジア系は161件が279件に拡大。半面、ユダヤ系住民らに対しては963件が683件に減った。
アジア系の被害は新型コロナウイルス禍の到来でインターネット上や政治的言動で汚名を着せられて標的となった側面があり、実際の件数はより多いとの見方がある。
ヘイトクライムは、人種、民族、性的指向、性別、宗教や身体障害の要因などに根差し、被害の届け出は近年、増加基調にある。19〜20年の伸び率は過去最高で、特定の一つの偏見による被害件数は昨年、8052件で19年の3954件から急増していた。
報告書によると、人種や民族的な要因で狙われた被害者の比率は61.8%で、19年の58%から上昇。性的指向が原因の事件は約20%、宗教的な偏見は13.3%だった。
特定の偏見が動機だった被害を報告したのは昨年1万1000人以上で、複数の異なる偏見による犯行の被害者は346人だった。
身元などを割り出した加害者のうち、半数以上は白人だったという。
年次の憎悪犯罪統計は1990年の連邦法により司法省とFBIが作成を義務づけられ、全米でのヘイトクライムの現状を包括的に把握出来る材料ともなっている。
ただ、全米の法執行機関が関連データをこの年次報告書の作成のためFBIへ送る義務はなく、実際の被害件数は大幅に少なく見積もられている可能性がある。憎悪犯罪として立件出来る権限は警察ではなく一部の行政機関や地方の検察当局にあるため、FBIが利用しているデータは不完全との指摘もある。
連邦政府機関はヘイトクライム関連のデータを地方の検察当局や裁判所からは収集していない。