米国防長官、中国による近隣国圧迫に言及 太平洋の資源略奪も指摘
シンガポール(CNN) オースティン米国防長官は11日、アジア各地の安定を脅かす中国の威圧的かつ攻撃的、危険な行動を批判し、米国はあらゆる圧力に対抗するため地域のパートナーを支援すると言明した。
オースティン氏はアジアの主要な防衛会合であるアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)で基調演説を行い、「インド太平洋諸国が政治的な脅しや経済的威圧、海上民兵による嫌がらせを受けることがあってはならない」と表明した。
中国の正式国名「中華人民共和国」の英語略称を使い、「PRCの動きはインド太平洋の安全保障や安定、繁栄を脅かすものだ」とも指摘した。
さらに中国が近隣諸国を圧迫している事例として、台湾周辺空域への多数の軍用機の派遣、米同盟国の哨戒機への危険な対応、地域の資源を略奪する違法な漁業活動などを列挙した。
オースティン氏と中国の魏鳳和(ウェイフォンホー)国防相の間で10日夕に行われた二国間会談と同様、今回の演説でも台湾が重要な位置を占めた。
二国間会談では、台湾を巡る長年の現状の変更を試みているとして米中双方がお互いを非難していた。
オースティン氏は演説で、米政権がそうした行動に出たことはないと説明。「我々は断固として長年この地域の利益になってきた現状を維持する」と語った。「一つの中国」政策の下、米国は台湾が自国の一部だとする中国の立場を認知しているが、台湾に対する中国の領有権主張を正式に承認したことは一度もない。
だが、オースティン氏は中国の行動は現状維持とは異なると指摘し、「我々は台湾周辺で中国の挑発的かつ不安定化を招く軍事行動が着実に増えているのを目の当たりにしている。その中には、ここ数カ月、ほぼ毎日にわたって記録的な数の人民解放軍機が台湾周辺を飛行していることも含まれる」とした。
一方、中国は10日、米国こそ武器売却などで台湾を巡る現状を脅かしていると批判。中国は武器売却について「中国の主権と国益を著しく損なうものだ」と反発している。
魏国防相はオースティン氏との会談で、台湾が独立を宣言すれば戦争も辞さないという中国の長年の立場を改めて表明した。