バイデン氏のアイルランド訪問 帰郷・外交・政治が交錯
北アイルランド・ベルファスト(CNN) 昨年夏、新型コロナウイルスに感染したバイデン米大統領がホワイトハウスで隔離生活を送っていた時、机に積まれた本の山の上に320ページのペーパーバックが乗っていた。ケネディ元大統領のアイルランド訪問を振り返った「JFK in Ireland(原題)」だ。
バイデン氏の前のアイルランド系カトリックの大統領だったケネディ氏は1963年、父祖の地アイルランドを訪れた。暗殺の5カ月前のことだった。後にケネディ氏は側近に「私の人生で最良の4日間」だったと語っている。
それから60年後。アイルランド系カトリックの現職大統領であるバイデン氏は11日、自身のアイルランド訪問に出発した。まず英領北アイルランドに向かい、12日から15日までアイルランドを訪れる予定だ。
今週の訪問は部分的には帰郷であり、国家計略でもあり、そして政治でもある。バイデン氏が大切にする個人の歴史と、永続的な善を目指す力としての米国外交という同氏に深く染みついた考え方がタイムリーに交錯する訪問となる。
バイデン氏は11日にホワイトハウスを出発する際、歴訪の目標について「ベルファスト合意とウィンザー合意の維持、つまり和平の維持を確実にすることだ」と語った。
「どうか幸運を祈ってほしい」。バイデン氏はそう言って大統領専用機に乗り込んだ。
今回の訪問は1998年に調印されたグッドフライデー(聖金曜日)合意に合わせたもの。この合意により、「トラブルズ」と呼ばれる北アイルランドの流血の宗派紛争に終止符が打たれた。合意が成立した背景には、クリントン元大統領やジョージ・ミッチェル上院議員をはじめとする民主党関係者の多大な尽力があり、バイデン氏は11日からのベルファスト訪問でこのレガシー(遺産)を強調したい考えだ。
しかし、今回の訪問のハイライトとなるのは、今週後半に予定されるアイルランドでの個人的な日程だろう。バイデン氏はラウス県やメイヨー県などを訪れ、家族のルーツを探る予定だ。
「ご存じのように、私は皆さんと同じく、アイルランド系の家系を誇りに思っている」。バイデン氏は先月開催された聖パトリックの祝日の昼食会でそう語り、「私の記憶にある限り、この点は言うなれば私の魂の一部になってきた」と言い添えた。