より良き世界に向けて学んだ教訓 安倍首相が寄稿
持続可能な成長
だが究極的には、世界の貧困撲滅とは持続可能な発展を意味する。これは、発展途上国に「質の高い成長」をもたらすインフラや人材育成のため、ニーズの高い支援を行うことを意味している。日本はこれを念頭に、アジアの国々向けに「質の高いインフラパートナーシップ」を立ち上げた。インフラ投資は利用者にとって長期的な意味合いと恩恵をもたらすものであり、コスト評価ではライフサイクル全体でのコストといった要素も考慮に入れる必要がある。
地震や津波などの自然災害に対処してきた経験を持つ国として、日本は災害リスク低減を柱に据える方針を貫いている。それに従い、我々は「ビルド・バック・ベター(BBB)」政策のもと、災害予防や災害発生後の復旧への投資に重点を置いている。日本は今、太平洋の島々やカリブ諸国など脆弱(ぜいじゃく)性を抱える地域において、教育や交流プログラムなど災害への準備強化を目的とした取り組みを進めている。
こうした手法はすべて、2015年2月に発表した日本の「開発協力大綱」に反映されている。日本はこの大綱に基づき、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に積極的に貢献していくことを公約している。
国連は70年前、第2次世界大戦終結にあたり創設された。それ以来、日本は着実に平和の道を歩み、国を再建してきた。1950年代半ばからは、我が国の発展の経験をアジアの国々をはじめとする他国と共有するべく積極的に取り組んできた。
アジアはこの時期、めざましい発展を遂げ、大半の地域で民主化を高いレベルで実現してきた。こうした教訓の多くは、アフリカや中東を含む世界の他の地域にも適用することができる。
実際、私はこれに留意しつつ、国連や他の共催者とともにケニアで第6回アフリカ開発会議(TICAD)を主催する。この会議がアフリカで開催されるのは初めてとなる。我々はこの会議や、来年の先進7カ国(G7)首脳会議での議長職の機会を、世界中の首脳と緊密に連携していくために活用していきたい。
この数十年で得られた教訓とは、不安定と貧困が世界のどこかに存在する限り、個々の国の安全保障は危ういということだ。我々が自身の経験を共有することが、こうした課題に立ち向かい、開発協力の分野に新たな一章を開く上で助けになることを願っている。
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安倍晋三氏は日本の首相です。記事における見解は同氏のものです。
この記事は米CNN.comに掲載された英文記事を翻訳したものです。