従業員の「リモート解雇」、通告時に避けるべき5つの間違い
どのような方法で従業員を解雇するかは企業の評判にかかわる問題だ。
米国ではつい先日、住宅ローン融資会社ベター・ドット・コムの最高経営責任者(CEO)がオンライン会議システム「Zoom(ズーム)」で約900人を解雇し、すぐさま反発を受けた。
理由が財務の問題であれ、従業員自身の成績であれ、解雇通告に前向きに反応する人など誰もいないだろう。そのため、解雇を告げる人は、自身の振る舞いや解雇対象者の扱い方について可能な限り慎重にする責任がある。
最良の方法は、解雇の知らせは必ず対面で伝えることだ。
それが不可能で、ビデオ会議や電話を通じて解雇通告せざるを得ない場合でも、人間味のある対応をすることは可能だ。以下ではリモートで解雇を告げざるを得ない場合に避けるべき間違いを挙げる。
◇
1.従業員を不意打ちにする
自宅は通常、その人にとっての安全地帯となる。このため、キッチンにいたり、子どもや配偶者に聞こえる場所にいたりする社員に突然解雇を告げるのは、オフィスでの通告に比べ個人の空間への侵入度が高い。
従って、影響を受ける部門の従業員(解雇対象者だけでなくチームメンバー全員)に対し、今後の変化について話し合う短い1対1のオンラインミーティングを設定すると1~2日前に告げ、どこか静かな場所でミーティングに臨むよう提案するのが最善の方法となる。
すべての従業員が一時解雇ではないかと察知するとは限らないが、何らかの重大な知らせであることを予期する可能性は高い。
再就職支援企業キャリアマインズのレイモンド・リー最高経営責任者(CEO)はこれについて、「従業員が不意を突かれないよう、予測の機会を設ける作業になる」と語る。
2.ツールの練習を忘れる
一時解雇する際に言う内容を予行演習するだけでなく、解雇を告げるツールを必ずマスターしておくようにしよう。
つまり、明確で簡潔なメッセージを考えつつ、使用予定のビデオ会議ツールや電話会議システムで人事管理者と練習する必要がある。
またそのツールのセキュリティー機能を把握しておき、「ズーム爆弾」を投下されたり別の方法でハッキングされたりしないようにすべきだと、リー氏は助言する。
3.プライバシーを与えない
一時解雇への反応は人によって若干異なるだろう。通告時の様子が周囲に見られているという感覚にさせるべきではない。
ビデオ会議で大量の人を解雇しなければならない場合、対象者全員のカメラをオフにしておき、対象者から自分しか見えないようにすべきだと、ビジネスアドバイザリー企業ガートナーの人事調査責任者ブライアン・クロップ氏は言う。
「解雇通告は極めて感情的な経験となる。何も反応を示さない人がいる一方で、泣き崩れる人もいるだろう。カメラに映った状態で、他の人に前でそれをやるのは敬意に欠ける」(クロップ氏)
4.社内ネットワークへのアクセスをあまりに早く切断しようとする
一時解雇が対面で行われる場合、IT部門は面接中に従業員のコンピューターを会社のネットワークから切断することが多いとみられる。
クロップ氏は「しかし、オンラインで一時解雇を行う場合、途中で接続を切るわけにはいかない」と指摘する。
どのような段取りで従業員のネットワーク接続を切断するのか、人事やIT部門と事前に調整しておこう。
企業の機器を回収するかどうか、どのような方法で回収するのかを決める必要もある。クロップ氏は「一部の企業は発送用品を従業員に送り、IT機器(例えばノートパソコン)をオフィスに送り返すよう要請している」と語る。機器の年数が古く、回収や保管のコストに見合わない場合にはそのまま手元に置くよう指示する企業もあるという。
5.正直さや思いやりに欠ける対応
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、あらゆる人の生活がより困難になった。一時解雇される人にとってはなおさらだろう。
企業の状況や一時解雇を行うビジネス上の理由について正直に話す一方、幹部らが払っている犠牲についても明確に話すべきだと、クロップ氏は指摘する。「企業が直後の5カ月間をどのように扱うかが、雇用主としての今後5年間の評判を決める」
キャリアマインズのリー氏は、再就職支援企業やキャリアコーチ、カウンセラーなどを話し合いの最後に立ち会わせるのも重要だとの見方を示す。
雇用者の許可をもらい、そうした専門家が相手と通話できるようにし、心情を吐露する機会を与えてから、次の段階に向けた会話を始める。「そうした専門家は人々が前に進む手伝いをするための訓練を受けている」(リー氏)