みんな大好きレゴブロック、犯罪者にとっても「宝の山」
ニューヨーク(CNN) 子どもから10代の若者、大人まで、ブロック玩具「レゴ」のファン層は幅広いことで有名だ。だが最近その中に、素性の良からぬ連中がお門違いの理由で紛れ込んでいる。
レゴ製品、それも100ドル(約1万6000円)から1000ドル(約16万円)を超える価格帯の高価なレゴセットが、単独の万引き犯と小売店を狙った組織犯罪グループの両方から狙われている。合法、違法いずれの転売ルートでも十分もうけが出るため、窃盗犯はわき目もふらずに陳列棚のレゴセットへ向かう。
ミゲル・ズニガさんはカリフォルニア州ロサンゼルス郡ロミータにある中古レゴ専門チェーン店「Bricks & Minifigs」の経営者だ。先月18日に強盗に遭い、今も立ち直れずにいる。
レゴを狙った強盗が発生したのは18日の朝5時ごろだった。
「眠っていたら、ADT社の防犯システムから通知の電話が鳴った。妻が電話を取った。すぐさま防犯カメラに向かうと、強盗にやられている映像が映っていた」とズニガさんはCNNに語った。
10分もしないうちに店に到着したが、強盗犯の姿はなかった。ズニガさんの概算では、あわせて約5000~7000ドル相当のレゴが持ち去られていた。
CNNが小売店を狙った犯罪に詳しい専門家に話を聞いたところ、盗まれたレゴは簡単に転売できるという。一般的に足がつかず、未開封や未使用の場合は小売価格とほぼ同じ金額で売りさばける。使用済みでも状態が良ければ、小売価格の半分の値がつくこともある。
6月18日に強盗の被害にあったズニガさんの店舗/Courtesy Miguel Zuniga
ここ数カ月、複数の州でレゴを狙った窃盗が発生している。
CNN提携局KABCによると、先月カリフォルニア州では小売店を狙った強盗犯罪組織に関与していた2人が逮捕された。南カリフォルニアの複数の店舗でレゴ数千点を盗んだ疑いがもたれている。
同局が報じたロサンゼルス市警(LAPD)の声明によると、小売価格20ドルから1000ドルを超えるレゴ商品2800箱以上が押収されたという。
フィラデルフィアでもここ数カ月、バーンズ・アンド・ノーブルやターゲットをはじめとする小売店で、小売価格250~1000ドル相当のレゴセットが相次いで盗まれる事件が報告されている。ターゲットは店舗のレゴを狙った窃盗に関して一切情報を明かせないとCNNに語った。バーンズ・アンド・ノーブルにもコメントを求めたが、すぐに返答は得られなかった。
国境を越えたカナダのブリティッシュコロンビア州リッチモンドでは、今年3月に警察が盗まれた玩具1000点以上を押収した。盗品の中には15万ドル相当以上のレゴセットやぬいぐるみもあった。
とくに盗まれる商品
具体的な数字を入手するのは困難だが、専門家によればレゴセットは窃盗の被害に遭いやすい小売商品トップ10圏内の常連だという。他はブランドもののジーンズやハンドバック、デザイナーものの靴、オレイ社のスキンケア製品やアップル社の製品などだ。
「レゴは唯一無二のブランドだ。絶えず新製品を発表し、ポップカルチャーとのタイアップや特別版の商品でつねに話題に上っている」と語るのは、フロリダ大学で犯罪学を研究するリード・ヘイズ氏だ。ウォルマートやターゲット、ホームデポ、ギャップなどが加盟する「ロス・プリベンション・リサーチ・カウンシル(LPRC)」のディレクターも務めている。
ヘイズ氏によれば、ヘイズ氏のチームはレゴ商品を扱う多数の小売店やレゴランドと提携している。「レゴの需要は安定している」
結果として、盗まれたレゴ製品を売買する場だけでなく、とくにインターネットでは偽造レゴを取引する場も出没し始めている。
「Bricks & Minifigs」の店頭で売られるレゴブロックの様子/Michael Blackshire/Los Angeles Times/Getty Images
カンザス州ウィチタの警察署で窃盗犯罪局を率いるケイシー・スローター警部は、レゴ犯罪を知り尽くしている人物だ。
「我々の管轄でもレゴの玩具はよく盗まれる商品のひとつだ」とスローター氏はCNNに語った。「同社の商品を扱う小売店はみなレゴ窃盗に狙われやすいが、中古レゴを転売する専門中古販売店もいくつか出てきている。そういった店も標的にされている」
レゴを狙った窃盗犯は楽に稼げると警部は言う。「盗まれてから追跡するのは困難だ」
ウィチタ警察署から提供されたデータによると、2024年1月8日から5月7日にかけて同署が捜査したレゴを狙った窃盗事件は19件。データを見ると、「スター・ウォーズ」「インディ・ジョーンズ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」といった映画にちなんだレゴ製品などが盗まれていた。
CNNがレゴ社にコメントを求めたところ、同社のウェブサイトを案内された。そこには消費者向けに、偽オンラインショップや偽造レゴの見分け方が記載されていた。
カリフォルニア州では4月以降、数軒のBricks & Minifigsが窃盗に遭った。
ロサンゼルス郡保安官事務所で組織犯罪局を率いるカルビン・マー警部はズニガさんの店舗の強盗について、「おそらくレゴに的を絞った盗みはこれで4~5度目だ。30秒から1分と、あっという間に盗まれる」とCNNとのインタビューで語った。
「防犯カメラを見たところ、犯人は特定のレゴセットを狙っているのが分かる。犯人は獲物をしっかり把握していた。希少価値の高い高価なセット、レアものやコレクターズアイテムだった」(マー警部)
CNNの取材で強盗について語るズニガさんは、感情をあらわにした。
監視カメラが捉えた窃盗犯の様子/Miguel Zuniga
強盗に遭った当日、ズニガさんは店内を掃除した後、シャワーを浴びに帰宅した。
「店に戻ってから、困った時に駆けつけて助け合う救助信号を近隣地域に出した」とズニガさん。駆けつけた顧客の中には自分のレゴセットを寄贈する人もいた。ズニガさんは地元のターゲットで売っていたレゴセットを購入し、空になった陳列棚を埋めた。
「午前9時、朝一番に来店したのは高価なレゴセットを作っている71歳の顧客だった」。ズニガさんはすすり泣き、声を震わせながら当時を振り返った。「地元では有名なレゴ愛好家だ。彼もまた涙を浮かべていた」