成功の証しの大型犬が香港でも人気 「密輸」などの問題も
獣医のシンシア・スマイリー氏は、チベタン・マスティフは香港の蒸し暑い気候に合わないだけでなく、犬にも人間にも高い社交性が求められる人口密集地には性質的に合わないと指摘する。
スマイリー氏がこれまでに扱った2頭のうち1頭は、男性を襲って数週間入院する大けがを負わせ、安楽死させられたという。
さらに香港での需要増大は、中国本土からの密輸にも結びつく。狂犬病が存在しない香港は、ペットの輸入を厳しく規制しており、中国本土から犬や猫を持ち込む場合は少なくとも4カ月間の検疫が定められている。
それにもかかわらず、深セン近郊ではチベタン・マスティフを2週間以内に香港に届けられるというペットショップが簡単に見つかる。
あるペットショップの経営者は「配送業者は通関当局と『特別な関係』にあるので何も問題はない」と胸を張る。1頭の値段は1万7000人民元(約27万円)前後。香港からは十数頭以上のまとまった注文が入ることもあるといい、香港で転売して利益を上げる人もいるようだと業者は解説する。
こうした状況について香港の動物愛護団体は、「香港には狂犬病が存在せず、検疫制度と予防接種の制度が確立されているのに、密輸によってそうした制度が危険にさらされかねない」と危惧している。