星空を超えて 現代天文学の技術と意義
このようにさまざまな困難に見舞われハッブル望遠鏡だが、その後天文学に変革をもたらした。地球から望遠鏡で宇宙を見ると大気の影響でぼやけて見えるが、ハッブル望遠鏡は大気圏外にあるため鮮明な画像の撮影が可能だ。
いまだ謎に包まれている「暗黒エネルギー」により、宇宙の膨張が加速していることの解明がハッブル望遠鏡での観察で進んだ。また、太陽以外の恒星で惑星が形成されている画像を送ったり、ほぼすべての銀河の中心に巨大なブラックホールが存在することも示してきた。
そして今、ここで利用された技術はわれわれの日常生活のさまざまな面に影響を与えている。
ハッブル望遠鏡にはCCD(電荷結合素子)と呼ばれるデジタルセンサーが搭載されている。このCCDは、写真乾板よりもはるかに高い感光性を持つ。天文学者はCCDの「初期導入者」だが、今や歯科医やがん専門医も同様のセンサーを利用している。さらに、携帯電話に搭載されているカメラのほぼすべてにCCDが使用されている。
また、このCCDを搭載した新たな検出器は、膨大な量のデータを生み出すため、広範な分析が必要となる。例えば、チリのVISTA望遠鏡が一晩に生み出すデータ量は300GB以上と、音楽CD約600枚分に相当する。