完全まひ患者と意思の疎通を、医療科学の挑戦<2> 「まばたき」と「脳の操作」
ノースイースタン大学電気・コンピューター工学科の准教授兼副学科長で、脳コンピューター・コミュニケーション装置の開発に際して学生らに助言を行ったワリード・メレイス氏は、ビルバウマー氏らの研究の徹底ぶりに感銘を受けたという。
メレイス氏は、「コンピューターサイエンスの世界では通常、機械学習を使ってコンピューターを訓練して何かをさせるが、ビルバウマー氏の研究では、コミュニケーションが取れない患者を訓練して脳の状態を操作させ、回答させている」と述べ、この最新の研究論文の執筆者らを称賛した。メレイス氏自身はこの研究には関わっていない。
しかしメレイス氏は、このようなコミュニケーション装置が、一般的にロックト・イン状態の患者に使用されるようになるにはしばらく時間がかかると考えている。まずは、この研究が実際の介護現場で再現され、実行される必要がある、とメレイス氏は指摘する。
メレイス氏は「まだ先は長い」とし、さらに次のように続けた。
「ロックト・イン状態の患者の多くは病院ではなく、老人ホームや介護施設にいる。これらのプロセスを各ユーザーのさまざまなライフスタイルに適合させるには、さらなる飛躍が必要だろうが、いずれ実現できると考えている」
また、患者らに質問の内容がより正確に伝わるようにするためにさらなる研究が必要だ。前出のビルバウマー氏が行った最新の研究では、「パリはフランスの首都である、イエスかノーか?」のようにあらかじめ答えが分かっている質問であっても、患者らの正答率は70%にとどまった。
◇
次回「完全まひ患者と意思の疎通を、医療科学の挑戦<3> 技術普及への課題は」は8月16日公開