古代アイルランド、エリート層に近親婚の慣習 遺伝子データを分析
(CNN) 古代アイルランドのエリート層に属する家族の間には、親子やきょうだい同士で婚姻関係を結ぶ近親婚の慣習が存在した――。考古学者や遺伝学者のグループが、新石器時代の複数の墳墓から採取した遺伝子データの分析によってそうした結論を導き出した。
研究者らは、アイルランド東部ミース県のニューグレンジにある5000年以上前の羨道墳(せんどうふん)に埋葬された男性にゲノム解析を行い、近親交配の証拠を突き止めた。同国トリニティー・カレッジ・ダブリンのチームが報道向けの発表の中で明らかにした。
男性は支配階級に属しており、親やきょうだいに当たる第1度近親者との婚姻を行っていたことが示唆される。こうした慣習は、古代エジプトやインカ帝国の王族とも共通するものだという。
トリニティー・カレッジの遺伝学者、ララ・カシディー氏によると、埋葬された男性のゲノムを調べたところ、両親から受け継いだ遺伝情報が極めて似通っていた。分析を重ねた結果、両親が第1度近親者同士だったと確認するに至ったとしている。
研究の全容を記した論文は17日、科学誌ネイチャーに掲載された。論文を執筆したトリニティー・カレッジのダン・ブラッドリー教授は、「予想外の発見」であり、新石器時代のアイルランドにこうした慣習が存在したとはだれも思っていなかったと明かした。
ニューグレンジの墳墓の内部は、冬至の日に上る太陽の光が差し込む作りになっていることで知られる/DeAgostini/Getty Images
研究者らによれば、第1度近親者同士の結婚はほぼ全世界で禁忌となっており、社会的に容認されていた記録は神格化された王族といったエリート層の間でのみ確認できる。支配階級が自分たちとその他の人々とを区別する目的でこうした慣習を行い、権力の強化や正当化に利用していたとみられる。
ニューグレンジに埋葬された男性については、同じミース県の西部にあるカローモアとカローキールの羨道墳に埋葬された人物とも遺伝的な関連があることが分かっているという。