野生動物のための「横断歩道」、ハイイログマの生命線に カナダ
フェンスも野生生物の横断歩道もない約40キロの区間で死んだ動物の数は、Y2Yが記録しているだけでも年間約70頭。けがをした動物は道路から離れて死ぬことも多いため、実際の数はもっと多いだろうとヒルティ氏は話す。
一方、野生生物の横断歩道と道路わきのフェンスを設置した区間では、車にひかれて死ぬ動物が激減した。約88キロの区間に道路下の歩道41本と道路上の歩道7本が整備されたバンフ国立公園の場合、野生生物と車の衝突は80%以上減り、ヘラジカとシカに限れば96%以上減少した。
横断歩道は動物を助けるだけでなく、「人間にとっての安全性も高まる」と語るのは、バンフ国立公園を管理するカナダ公園局のジェシー・ウィッティントン氏。
横断歩道の効果を検証しているウィッティントン氏は、カメラを設置して動物たちが横断歩道を使う様子を観察。ハイイログマやオオカミに装着した発信機でも、横断歩道が長距離を移動する助けになっていることが確認された。
動物たちはすぐに横断歩道の使い方を学習するわけではない。しかし道路沿いに設置したフェンスをつたって横断歩道にたどり着き、やがてクマやオオカミが横断歩道の使い方を覚えて、その知識を次世代に伝えていた。
96年以来、カナダ公園局は、動物たちが横断歩道を使う場面を18万7000回観測した。「横断歩道が機能している証し」とウィッティントン氏は胸を張る。
Y2Yのヒルティ氏は、「私たちのやり方が継続的に採用されることを心から願う。そうすれば人間と自然の両方が繁栄できる」と語り、野生生物の横断歩道が世界中で標準になってほしいと話している。