治療薬が効かないスーパー耐性菌、2050年までの死者4000万人に迫る恐れ
(CNN) 治療薬が効かない「スーパー耐性菌」による世界の死者は、2050年までに70%近く増える可能性があるという研究結果が、16日の医学誌ランセットに発表された。
薬剤耐性(AMR)に直接起因する世界の死者は、2025年から2050年までの累計で3900万人を超す可能性があるとしている。
薬剤耐性とは、細菌や真菌などを死滅させるための薬剤に対抗する能力を病原体が獲得した状態。世界保健機関(WHO)は薬剤耐性を「公衆衛生と開発を脅かす世界最大級の脅威」と位置付ける。病原体は、人間や動植物に対する抗菌薬の誤用や過剰使用を通じて耐性の獲得が助長され、薬剤耐性が促進される。
今回の研究は米ワシントン大学健康指標評価研究所が発表した。筆頭著者のクリス・マリー氏は状況の一層の悪化を予想し、「本当に大きな問題に対応できるよう、新しい抗生剤と抗生剤の管理に注目する必要がある」と述べている。
研究チームは1990年から2021年にかけ、病原体22種と、薬剤と組み合わさった病原体84種、感染症11種について、薬剤耐性に関連または起因する死亡数と疾患数を204の国と地域をまたいで推定した。薬剤耐性に起因する死亡とは、薬剤耐性が直接的な死因となった症例。薬剤耐性に関連する死亡とは、別の原因が薬剤耐性によって深刻化した可能性のある症例と位置付けている。
この推定では約5億2000万人の記録を使用した。
その結果、1990年から2021年の間に、薬剤耐性で死亡した5歳未満の子どもは50%以上減ったのに対し、70歳以上の高齢者の死亡は80%以上増えていることが分かった。この傾向は今後も続くと予想している。
こうしたパターンが判明したのは予想外だったとマリー氏は説明する。15歳未満では、ワクチン、水、衛生プログラムなどによって薬剤耐性による死亡が減少する一方で、50歳を超えると死者は着実に増えているといい、世界が高齢化するほど高齢者が重い感染症にかかりやすくなると同氏は指摘している。
薬剤が組み合わさった病原体の中で、全年齢層を通じて死亡数が最も大きく増える原因となっていたのは、抗生剤のメチシリンと黄色ブドウ球菌が組み合わさったメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)だった。MRSAによる死者は、1990年の5万7200人から2021年には13万人に増加した。
研究チームは2050年までに予想される薬剤耐性による死者数についても予想。もし現在のままの状況が続いた場合、2050年には薬剤耐性に起因する世界の死者が190万人に、薬剤耐性に関連する死者は820万人に達する可能性があると推計した。
一方で、もしも世界の医療が改善された場合、累計9200万人の死を回避できる可能性があると予想。もしも耐性菌に対して効き目のある抗生剤の新薬が開発された場合には、累計で約1100万人の死を回避できる可能性があるとしている。