気候対策の主導権争い、中国が米国を追い抜くこれだけの理由
(CNN) 中国・庫布其(クブチ)砂漠の砂丘の高い場所には、駆け馬の輪郭を描くように約20万枚のソーラーパネルが並べられている。
このソーラーパネルは、巨大な「ジュンマ・ソーラーファーム」がある中国北部・内モンゴル自治区の文化的シンボルであると同時に同国がクリーンエネルギーの未来に向かうスピードも表している。
中国は、地球上のどの国よりも速いペースで風力・太陽光発電計画を推進している。トランプ次期米大統領が世界の気候対策リーダーとしての米国の役割を後退させる可能性が高いため、専門家らは中国が気候対策を先導しなければならないと述べている。
そして、中国は地球温暖化を引き起こす炭素の排出量が世界最大であるため、世界の排出量を削減する力もどの国よりも大きい。
中国は20世紀初頭、世界の炭素汚染のごく一部を占めるに過ぎなかったが、世界の工場、そして最近では強力な技術革新国家へと急速に変ぼうするにつれ、排出量が急増。同国は今や圧倒的な世界最大の炭素排出国で、世界の排出量の3分の1近くを占めている。
炭素汚染は過去最高水準にあるが、希望の光もある。中国の排出量増加が鈍化しつつあるのだ。一部の気候専門家や米高官は、中国の排出量はまもなくピークを迎え、減少するとみている。
ただし中国はエネルギー消費を減らしているのではなく、驚くべきペースで風力・太陽光発電を取り入れ、これまで以上にエネルギーを消費している。
中国は世界の風力・太陽光エネルギーの約半分を占めている。世界の他の国々よりも多くの太陽エネルギーを生産する能力を有し、世界の風力エネルギーの40%以上を生産している。
中国は、世界で温暖化を引き起こしているにもかかわらず、世界的な再生可能エネルギー大国なのだ。
同国は、世界の実用規模の太陽光・風力発電計画の3分の2にあたる、およそ339ギガワットの給電能力を構築している。これは米国の住宅戸数のほぼ2倍にあたる2億5000万世帯以上への給電が可能な量だ。グローバル・エネルギー・モニターによると、これは、すでに構築されている758ギガワットの風力・太陽光発電容量に上乗せされる。
国際エネルギー機関(IEA)によると、中国の太陽光発電は現在急速に拡大しており、2030年代初頭までに、同国は米国の総消費電力量よりも多くの電力を太陽光から生成する見込みだ。
中国での風力・太陽光発電量が電力構成に占める割合は、00年にはごくわずかだったが23年には16%近くにまで増加。発電用に燃焼される石炭の量は依然として増加しているが、石炭の割合は同期間に17パーセントポイント以上減少した。
現在のより大きな問題は、このクリーンエネルギーが石炭火力発電所の廃止にもつながるかどうかだ。グローバル・エネルギー・モニターによると、風力・太陽光は現在、同国の電力の37%を生成でき、すでに石炭火力の優位性に取って代わっている。中国は最も古い石炭火力発電所を廃止し、他の発電所の稼働も減らしている一方で、発電所の新規建設も止めていない。
中国の現在の気候変動対策は、地球温暖化を引き起こす汚染の排出のピークを30年ごろまでに迎えることだ。米国当局者は中国に対し、35年までに30%の排出量削減を求めている。
これによって回避できる地球温暖化物質の量は膨大だ。米国当局者が示唆する30%の削減を中国が実現すれば、大気中に放出される汚染物質4.7ギガトンを削減できることになる。国務省当局者によると、これは米国が今年排出すると予測される量に匹敵する。
英国に拠点を置く気候ウェブサイト「カーボン・ブリーフ」が行った最近の分析によると、中国の排出量は今年初めに1%減少した。これは、新型コロナで経済が停滞して以降、初めてのことだ。
専門家らは、この減少が持続的な傾向の証拠であるかどうかを判断するのは時期尚早だとも述べている。また、1%の減少では、中国政府が来年掲げる気候目標を達成するには到底足りない。
ただし、中国経済で根本的な変化が起こっていることは明らかだ。同国では新型コロナ後のインフラ建設ブームが減速するにつれ、セメントや鉄鋼などの重工業資材の需要も減少している。一方、太陽光パネルや電気自動車(EV)の製造は増加している。
アジア・ソサエティー政策研究所の責任者は、15年以降、世界の排出量増加の90%は中国が占めており、中国の排出量が横ばいになることは「世界の排出量がピークに達し、横ばいになることを間違いなく意味する」と指摘した。