洞窟のクモを「ゾンビ」化して操る、新種の菌類発見 巣外におびき出し胞子拡散

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クモに感染し、胞子を生み出す段階にある新種の菌類「ギベルラ・アッテンボロギ」/Tim Fogg

クモに感染し、胞子を生み出す段階にある新種の菌類「ギベルラ・アッテンボロギ」/Tim Fogg

これまでのところ、科学者が観察したギベルラ・アッテンボロギの感染対象となるクモは2種のみ。どちらも洞窟に生息するコガネグモ科のクモで、欧州で見つかる。

この奇妙な菌類の発見の裏側には、興味深いエピソードがある。2021年、北アイルランド・ダウン県の自然保護区に残る打ち捨てられた火薬保管庫で撮影中、テレビのクルーがコガネグモ科のクモに付着している菌類を発見した。

クルーはこの時、クモが死の前、巣から離れて無防備な場所に移動していたことに気付いた。これは菌類が行動の変化を引き起こしたことを示唆する。

追加観察の結果、北アイルランドとアイルランドの洞窟から他にも感染したクモが見つかった。論文によると、どのクモも屋根や壁の無防備な場所にいた。

菌類に感染した洞窟のクモ。その下には卵嚢が垂れ下がる/Tim Fogg
菌類に感染した洞窟のクモ。その下には卵嚢が垂れ下がる/Tim Fogg

米コーネル大学の博士研究員ジェイ・スタフストロム氏は、「巣を作るクモの大半は巣の中にとどまることを好む。巣の中での生活に適した体のつくりになっているが、地面を歩き回るのは実はかなり苦手だ」と指摘する。

「菌類が何かに感染し、その生き物の行動を変えて菌類の拡散を手助けさせるという事実は、大変興味深い」という。スタフストロム氏は今回の研究に関わっていない。

新研究に関わっていない米フィールド自然史博物館の進化生物学者、マシュー・ネルセン氏によると、これまで正式に記録されている菌類は約15万種だが、この数は未知の多様な菌類の約5%に過ぎない。「今回の研究はこの課題への注目を促すもので、知識の穴を埋める取り組みがさらに活発化しそうだ」とネルセン氏はメールで指摘している。

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