米カリフォルニア州史上最悪の山火事で壊滅状態となった町、パラダイスの焼け跡に、人物を描いた数々の壁画が出現した。パラダイスにゆかりのあるアーティストが希望のメッセージを込めて制作した。
壁画を描いたのは、テーマパークのクリエイティブ・ディレクターでグラフィティー・アートの経験を持つシェーン・グラマーさん。現在は南カリフォルニアに住んでいるが、パラダイス周辺で子ども時代を過ごした。昨秋の山火事では当時の友人が20人以上、家を失ったそうだ。
被災した旧友の1人、シェーン・エドワーズさんが自宅の焼け跡を写真に撮ってフェイスブックに投稿したところ、これを見たグラマーさんから、壁画を描かせてくれないかと連絡があったという。
Terence Duffy
2人は年末に現地で待ち合わせた。グラマーさんはエドワーズさん宅の暖炉と煙突の跡に女性の肖像を描き、「灰の中の美女」というタイトルをつけた。
家が建っていた場所は町の入り口だ。町を訪れる人がこの作品を見て希望を感じてくれれば、とエドワーズさんは言う。
Terence Duffy
第1作の写真が拡散し、グラマーさんにはフェイスブック上で被災者から応援とリクエストのメッセージが殺到した。グラマーさんは結局、パラダイスに1週間滞在して壁画を描き続けた。
高校時代の友人の家の跡には、友人の娘が幼かったころの写真をもとに、空を見上げて未来を夢見る少女の顔をデザインした。教会の焼け跡にはキリストの肖像を、火災で母親を亡くした女性の自宅跡には母の肖像を描いた。
Terence Duffy
「被災者の悲しみを思うとつらい作業だが、作品を見て感動してくれるのが分かる」と、グラマーさんは言う。近くまたパラダイスを訪れ、さらに作品を増やしたいと話している。