２０２２年のレッドカーペットは、実験あり、自己表現あり、遊び心ありと、記憶に残るものだった。
２２年はとくにクラシック路線に走る有名人が多く、時には物議を醸したものもあった。はっきり言えば、キム・カーダシアンがＭＥＴガラで着用したマリリン・モンローのドレスだが。一方で、賛否両論分かれたブラッド・ピットのリネンスカートから、共演のジョージ・クルーニーを面白おかしくいじったジュリア・ロバーツまで、「何でもあり」のアプローチを取り入れたレッドカーペット参列者も多かったようだ。
だが衣装ネタで大混乱となる中（ハイディ・クルムによるミミズの仮装は特筆に値する）、際立ったシックなファッションもたくさん見受けられた。
以下スクロールして、２２年のレッドカーペットを飾ったトップ１０をどうぞ。
ゾーイ・クラビッツがニューヨークで行われた「ＴＨＥ ＢＡＴＭＡＮ―ザ・バットマン―」プレミア上映で着用したオスカー・デ・ラ・レンタのドレス
ゾーイ・クラビッツ/Evan Agostini/Invision/AP
ロバート・パティンソンとゾーイ・クラビッツ共演の新作「ＴＨＥ ＢＡＴＭＡＮ―ザ・バットマン―」の世界プレスツアーは、映画の登場人物に敬意を表したファッションが目白押しだった。だが３カ国で行われた一連のレッドカーペットの頂点に立つのは、ニューヨーク市のプレミア上映でクラビッツが着用したオスカー・デ・ラ・レンタのドレスに違いない。ほっそりした直線のコラムドレスは、クラビッツが演じるキャットウーマン役にちなんだゴシック調のコルセットと、猫のシルエット型の前身頃が特徴だ。
ブレイク・ライブリーが２２年ＭＥＴガラで着用したヴェルサーチェのドレス
ブレイク・ライブリー/Dimitrios Kambouris/Getty Images
５月、セレブたちはＭＥＴガラのテーマ「Ｇｉｌｄｅｄ Ｇｌａｍｏｕｒ（黄金のグラマラス）」を様々に解釈した。中には、より歴史を忠実に再現した者もいた（波紋を呼んだキム・カーダシアンのマリリン・モンローのドレスは、完全に時代を取り違えていたが）。一方で、ニューヨークの金ぴか時代を象徴的に表現したブレイク・ライブリーのドレスは誰もが認める大勝利だった。ヴェルサーチェの特注ドレスは大ぶりなサテンのリボンで束ねられ、リボンをほどくと長いスカートが階段に流れるように広がるというデザイン。自由の女神の緑青をイメージした色合いもさることながら、エンパイアステートビルやグランドセントラル駅など、ニューヨーク指折りの名所の要素が盛り込まれていた。ティアラも自由の女神にちなんだもので、象徴的な銅像の王冠部分にある２５カ所の窓の代わりに２５個の宝石があしらわれている。
エマ・コリンがロンドン映画祭で着用したＪＷアンダーソンのドレス
エマ・コリン/David Fisher/Shutterstock
エマ・コリンは２１年、ネットフリックスのドラマ「ザ・クラウン」シーズン４でダイアナ妃を演じて一世を風靡（ふうび）したが、２２年はリスクを恐れぬレッドカーペットの猛者として地位を確立した。２２年のオリビエ賞授賞式では風船ブラつきの道化師めいたロエベのドレスを着用し、ＭＥＴガラでは１９世紀のダンディズムに触発されたミウ・ミウのアンサンブル（とどめにシルクハット）で現れるなど、遊び心とファンタジーを何よりも最優先する姿勢を貫いた。ロンドン映画祭では、２３年春夏コレクションで発表されたばかりのＪＷアンダーソンのキッチュなドレスで登場。つや出し仕上げを施したワンショルダーのミニのバルーンドレスには、オレンジ色の金魚の写真がプリントされている。
ジェイダ・ピンケット・スミスが２２年アカデミー賞授賞式で着用したジャンポール・ゴルチエのドレス
ジェイダ・ピンケット・スミス/Kevin Mazur/WireImage/Getty Images
ジェイダ・ピンケット・スミスのレッドカーペットのドレスは、夫ウィル・スミスの悪名高い平手打ちで色あせてしまった感がある。だが玉虫色に光るエメラルドグリーンのガウンは、この夜とくに目をくぎづけにしたドレスのひとつだった。身体にフィットしたボディス、広がったハイネック、彫刻のように波打つスカートが特徴のドレスは、ジャンポール・ゴルチエのグレン・マーティンスがデザインしたもの。１月にパリ・オートクチュール・ファッションウィークのランウェーで初披露された。
ティモシー・シャラメがベニスで着用したハイダー・アッカーマンの背中開きスーツ
ティモシー・シャラメ/Maria Moratti/Getty Images
映画「君の名前で僕を呼んで」の主演俳優ティモシー・シャラメは、２２年のベニス国際映画祭を魅了した。人肉種族のロマンスを描いた映画「ボーンズ・アンド・オール」の宣伝で着用した背中の開いた真っ赤なホルターネック・スーツは、親友のフランス人デザイナー、ハイダー・アッカーマンによるもの。大胆な衣装はたちまち拡散し、シャラメの中性的なメンズファッションのレパートリーに加わった。
テイラー・ラッセルがロンドンで着用したスキャパレリのコルセット
テイラー・ラッセル/Abaca Press/Sipa USA/AP
先の「ボーンズ・アンド・オール」プレスツアーの一環で、シャラメと共演するテイラー・ラッセルはやはり目を見張るようなドレスで、ロンドン映画祭のプレミア上映に現れた。縦にラインの入った張りのあるコルセットをメインに、頭のてっぺんからつま先までスキャパレリ一色でまとめたドラマチックなスタイルは、ラグジュリーブランド「スキャパレリ」のクリエーティブディレクターを務めるダニエル・ローズベリーのデザイン。パリのアトリエで手縫いしたジャケットは製作に１５０時間以上も要した。
アン・ハサウェイがカンヌ映画祭で着用したアルマーニ・プリヴェの「プリンセス・ダイアリー」風ドレス
アン・ハサウェイ/Gisela Schober/Getty Images
５月に行われたカンヌ国際映画祭でのアン・ハサウェイは、自らの出発点、すなわち２０００年代公開の「プリンセス・ダイアリー」シリーズで演じたジェノヴィア王女役を彷彿（ほうふつ）とさせた。新作「Ａｒｍａｇｅｄｄｏｎ Ｔｉｍｅ（原題）」の上映では、アルマーニ・プリヴェの白一色のドレスに、息をのむサファイアのジュエリーを合わせて登場。レッドカーペットに立つ姿は絶世の美しさだった。
リル・ナズ・ＸがＭＴＶビデオ・ミュージック・アワードで披露したハリス・リードの衣装
リル・ナズ・Ｘ/Dia Dipasupil/Getty Images
ラッパーのリル・ナズ・Ｘがハリス・リードの手を借りて、またもやメンズウェアの定義を書き換えた。円形のフェザーの髪飾り、レザーパンツの上にフェザーをあしらったフープスカートという手の込んだ黒のアンサンブル姿で登場したリル・ナズ・Ｘは、ＭＴＶビデオ・ミュージック・アワードで人々の注目を集めた。
ゼンデイヤがエミー賞で着用したヴァレンティノのクラシカルドレス
ゼンデイヤ/Frazer Harrison/Getty Images
日頃からレッドカーペットで観客の目を楽しませているゼンデイヤだが、長年スタイリストを務めるロー・ローチの助けを借りて、９月の第７４回エミー賞授賞式でも話題を独占した。「ユーフォリア／ＥＵＰＨＯＲＩＡ」でドラマ部門主演女優賞にノミネートされたゼンデイヤは、ヴァレンティノの大きく広がる黒のストラップレスガウンに身を包み、まさにグラマーを絵に描いたかのようだった。
ドージャ・キャットがビルボード・ミュージック・アワードで着用したスキャパレリの異次元ドレス
ドージャ・キャット/Scott Kirkland/Sipa USA/AP
ドージャ・キャットが２２年のビルボード・ミュージック・アワードで披露したドレスは、多くの部門にノミネートされたアルバム「Ｐｌａｎｅｔ Ｈｅｒ」がテーマ。土星の形をしたゴールドのバッグに、２本の角が突き出た彫刻風コルセットをあしらった異次元スタイルは、ダニエル・ローズベリーがＳＦに着想を得た「Ｐｌａｎｅｔ Ｓｃｈｉａｐａｒｅｌｌｉ」コレクションからの１着で、２２年１月のパリ・オートクチュール・ファッションウィークで初披露された。
