ベトナム戦争時代の秘密地下室、新たな観光名所に
ホーチミン市(CNN) ベトナムのホーチミン観光といえば、郊外にあるクチトンネルが有名だ。しかしベトナム戦争の歴史を刻む地下ネットワークが市内に張り巡らされていたことは、あまり知られていない。
ホーチミン市の10区にある路地の先に、1950年代に「秘密地下室B」と呼ばれた民家がある。この家に住んでいた一家は軍の命令で印刷工場を営み、宣伝ビラの制作を担っていた。急襲を避けるためにつくられたのが地下室だった。
60年前のまま残る部屋の一画には、古びたチーク材の衣装ダンス。その扉が別世界への入り口だ。タンスの中に入り、狭く薄暗いトンネルを抜けると地下室に出る。井戸につながる通気用のトンネルも掘られた。
地下室Bは1952年2~5月につくられ、1957年に安全上の不安が高まったため閉鎖された。59年には発見されるのを防ぐために土で埋めたという。
観光客がトンネルを見学するためには10区の文化スポーツ観光局を通じて予約する必要がある。「まだ観光ルートにはほとんど入っていないが、非常に特別な場所」と地元の観光ガイドは解説する。
ほかにも市内各所に地下室や秘密室がつくられ、特に戦闘が激化した1960年にかけては、ベトナム統一を目指していた共産勢力の重要な拠点となった。