翼なしで飛ぶような速さ、世界最速の列車10選
8:KTX(韓国)
韓国は04年以降、高速鉄道網を急速に拡大した。地形が複雑なゆえに所要時間が長く、競争力のない従来の路線を回避する形で作られた。
04年にソウル―釜山間で開通したKTXは最高時速330キロで運行可能だが、通常の制限速度は時速305キロとなっている。フランスのTGVの技術をベースにした初代KTX―Iは、ソウル―釜山間の所要時間を4時間以上から2時間15分へと半減させた。
韓国は、フランス、日本、中国と並び、時速420キロ以上で走行可能な列車を開発した世界4カ国のうちの1つである。13年には新世代のHEMU―430Xプロトタイプが最高時速421.4キロを記録し、第2世代のKTX HSR-350xが記録した時速352.4キロという韓国の鉄道最高速度を更新した。
最新車両では国産技術を採用し、高い気密性を備えた車両や3層構造のガラスを導入することで、騒音を低減し数多いトンネルにおける不快感を解消した。
主要路線では毎時最大2便運行し、最大20両編成のKTXは、年間数億人の乗客を輸送する高速大量輸送システムである。KTXは、ソウルと南部の光州、木浦、麗水、北東部の江陵を結んでいる。ソウル―江陵線は18年冬季オリンピック開催都市の平昌に乗り入れるために建設された。
9:トレニタリアETR1000(イタリア)
9:トレニタリアETR1000(イタリア) イタリアの国鉄高速列車「フレッチャロッサ(赤い矢)」の営業最高速度は時速360キロ/Alessandro Rota/Getty Images
イタリアの国鉄高速列車「フレッチャロッサ(赤い矢)」は、民間の新たなライバルに対抗する形で2017年に導入された。
設計上の最高速度は時速400キロ、矢のような流線型のデザイン、出力1万馬力など、列車が持つ性能は赤い矢の名に恥じない。
営業最高速度は時速360キロだが、16年の試験走行では時速394キロに到達した車両もある。
列車の全長は200メートル、座数はスタンダード、ビジネス、プレミアム、エグゼクティブの4クラスで計457席。エグゼクティブクラスはわずか10席で、座席はリクライニング式アームチェアを採用した。
同列車はイタリアをT字型に貫く高速鉄道網を運行しており、北部のトリノ、ミラノ、ベネチアとボローニャ、フィレンツェ、ローマ、ナポリを結んでいる。
通常の営業速度は最高時速300キロだが、それでも国内の都市間移動に革命を起こした。ミラノ―ローマ間などの主要路線では鉄道のシェアを大きく伸ばし、イタリアのナショナルフラッグキャリアであったアリタリア航空の経営破綻(はたん)の一端となった。
過去2年間にわたる大規模な試験走行を経て、フレッチャロッサは2022年にミラノ―パリ間の運行を開始し、フランスのTGVと対決することになる。
またフレッチャロッサはスペインにも納入される。マドリードを起点とする高速路線で、スペインのAVEやウィゴーと競合する。
10:ハラマイン高速鉄道(サウジアラビア)
10:ハラマイン高速鉄道(サウジアラビア) サウジアラビアのハラマイン高速鉄道(HHR)は、メッカとメディナの2つの聖都を最高時速300キロで結ぶ/Bandar Aldandani/AFP/Getty Images
うだるような暑さと砂嵐は、高速鉄道にとって理想的な環境とは言い難い。だが、サウジアラビアのハラマイン高速鉄道(HHR)は、メッカとメディナの2つの聖都を最高時速300キロで結んでいる。
スペインのタルゴ35編成を最高気温50度に上る砂漠地帯を走るために特別に改造した車両は、450キロの道のりをわずか2時間で走破する。
HHRの各列車は13両編成、座席数は417席で、年間6000万人の乗客を輸送することが可能だ。この輸送力は、毎年200万人以上のイスラム教徒がメッカの聖地を訪れるハッジ(大巡礼)の際に試される。
18年に開業以来、HHRは2つの聖都間の移動手段として人気を博している。同区間を車で移動すると最大10時間かかることを考えれば、HHRが人気なのは当然だ。