米国が科学教育改革に本腰 狙いは世界で戦える人材育成
そして、それらの模型も見た目の出来で評価するのではなく、それらが何を表わしているのか、そしてどのようなプロセスをたどるのかの知識・理解で評価される。例えば、ナトリウム原子の模型が正しく組み立てられているか、またその原子から放出された電子が塩素原子に近付くとどうなるか、などだ。また生徒たちは、ある原子を飛び出して別の原子に移動する電子をただ観察するのではなく、自分の動的モデルを変化させ、原子と電子の結合自体を自ら構成する。生徒たちは知識を暗記するのではなく、構築するのだ。
またNGSSにより、技術と工学の一体化がさらに進む。科学と数学は、今後も子どもたちの学習の主要部分を占めるが、工学原理が科学的手法と同じくらい重要視されるようになる。
これにより、生徒たちが科学、技術、工学、数学の4分野に興味を持ち、大学でもこれらの分野に積極的に取り組んでくれることを教育者やビジネスリーダーたちは願っている。
「どんな基準を導入しても、一部の優秀な学校でさえ、すべての子どもが恩恵を受けるわけではない。生徒たちに大学の授業に対応できるだけの能力を身に付けさせるには、まだ相当の時間を要するだろう」と語るのは、天文学者で作家のジェフリー・ベネット氏だ。
ベネット氏は、米国の多くの生徒は大学の科学の講義についていけるレベルにないとしながらも、科学を学べば就職が容易になると指摘する。
NGSS導入のもう1つの狙いは、全国の生徒の標準化だ。新基準の導入により、米国で初めて、州を問わずすべての学校で同様の科学の授業が行われるようになる。