ドミニオン社幹部、トランプ氏側近らを名誉毀損で提訴
ワシントン(CNN) 先月行われた米大統領選で使われた投票集計機メーカー、ドミニオン・ボーティング・システムズの幹部が24日までに、トランプ氏陣営や保守系メディアを相手取り名誉毀損(きそん)の損害賠償などを求めて提訴した。同社はトランプ氏の敗北を巡る陰謀論の的となり、選挙結果を操作したとの批判にさらされていた。
トランプ氏は同社を「災害」と呼び、トランプ氏支持者は同社がトランプ氏への投票を削除し、製品戦略及びセキュリティートップのエリック・クーマー氏が選挙結果を覆そうとしているとの陰謀論を支持してきた。
今回の選挙でトランプ氏から票が盗まれた証拠はない。また、米政権と選挙管理当局者は同国史上「最も安全な」選挙だったと述べている。バイデン次期大統領は全米で700万票以上の差をつけ、選挙人の獲得数で306人とトランプ氏の232人を上回り勝利した。
提訴したのはクーマー氏で、22日にコロラド州の裁判所に訴状を提出した。被告はトランプ陣営のルディ・ジュリアーニ氏、顧問のシドニー・パウエル氏、保守系メディアのワン・アメリカ・ニュース・ネットワーク、ニュースマックス・メディア、極右系サイトのゲートウェー・パンディット、コロラド州の実業家で活動家のジョセフ・オルトマン氏など。
トランプ陣営のルディ・ジュリアーニ氏(左)とシドニー・パウエル氏。先月19日の記者会見時に撮影/Jacquelyn Martin/AP
クーマー氏の弁護士は、トランプ氏陣営の主張は「誤っていて根拠がない」として、クーマー氏の名声や専門家としての地位、安全性、プライバシーに「甚大な損害」を与えたと述べた。
訴状では、被告らは特にオルトマン氏の虚偽の主張に依拠したと指摘。同氏は各所のインタビューやソーシャルメディアで、クーマー氏が極左系集団アンティファの電話会議に参加し、自身はそれに潜入していたと述べている。
これについてCNNがオルトマン氏に尋ねると、「証拠は山のようにある」と答えたが、すぐに証拠を示すことはなかった。
訴状によると、オルトマン氏はエリック氏が会合で名乗った上で、トランプ氏は勝利しないと確信すると語ったと発言しているが、その会話の録音や潜入方法に関する説明は提供されていない。クーマー氏の弁護士は、同氏はそのような電話会議を知らず、参加や発言もしていないとして、オルトマン氏の主張を否定した。
訴状には、クーマー氏に届いたとされる多くの具体的な脅迫も示された。同氏は安全上の懸念から自宅を離れたと説明している。
クーマー氏は損害賠償のほか、名誉毀損に当たると判断されるすべての声明の撤回も求めている。
ドミニオン社幹部のエリック・クーマー氏/CNN
ドミニオン社は原告として加わっていないが、シドニー・パウエル氏やメディアを含む大勢がばかげた陰謀論に迎合し、数え切れない名誉を踏みにじったとの声明をCNNに寄せた。
ドミニオンと同様に陰謀論の標的となっている投票技術企業スマートマティックは今月、ニュースマックスやワン・アメリカ・ニュース、FOXニュースに、簡単な調査で虚偽と分かる誤った名誉毀損の主張を広めているとして警告状を送付。その後ニュースマックスは21日にドミニオンやスマートマティックが票を操作したという証拠はないと釈明。FOXは先週、同局の司会者やゲストが行った主張のいくつかが誤っていることを示す映像を放映する展開となっている。
19日には、トランプ陣営の法律チームがスタッフ数十人に、ドミニオンやパウエル氏関連のすべての文書を保存するように通知を送った。ドミニオンからパウエル氏に同社への非難を撤回するように要求する文書を受領したとも明らかにしていた。
トランプ陣営は一時、パウエル氏がジュリアーニ氏やジェナ・エリス氏とともに陰謀論に満ちた記者会見を行った後、同氏と距離を置く姿勢を示した。だがその後、パウエル氏はホワイトハウスを2回訪問。トランプ氏は選挙の不正を操作する特別検察官にパウエル氏を指名することを検討しているとも伝えられている。