米裁判所、サウジ皇太子に対する訴え退け 米政権が免責を勧告
ワシントン(CNN) 米紙ワシントン・ポストのジャマル・カショギ記者が殺害された事件をめぐって婚約者が起こしていた裁判で、米首都ワシントンの連邦地裁は6日、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子に対する原告側の訴えを退けた。バイデン米政権はこの訴訟について、ムハンマド皇太子の免責を認めるよう勧告していた。
ジョン・ベイツ裁判官は意見書の中で「不快感」を示しながらも、ムハンマド皇太子はサウジアラビア首相でもあり、国家元首として免責の対象になると米政府から告げられたと説明した。
その不快感は、カショギ氏殺害に対するムハンマド皇太子の関与だけでなく、皇太子が首相に就任したタイミングにも起因するとベイツ裁判官は説明した。ムハンマド皇太子が首相になったのは今年9月下旬で、婚約者のハティジェ・ジェンギズ氏とカショギ氏の支援者が起こした訴訟に対し、政府トップとして免責されるための策略と指摘されていた。
ベイツ裁判官は、「不審なタイミング」で皇太子が首相に任命されたと述べ、これまで同国の首相には国王のみが任命されていたという原告側の主張に言及。ムハンマド皇太子が首相になったのは、政府のトップになってほしいという望みが動機ではなく、今回の訴訟で責任を問われる事態から皇太子を守る目的があったことが示唆されるとした。
ベイツ裁判官は、ムハンマド皇太子の側近2人に対する訴えも、管轄権を理由に退けた。
もし米政権の勧告がなければ、裁判所はムハンマド皇太子に対する訴えを退けるべきではないという主張について検討していただろうとベイツ裁判官は指摘。しかし政権の意向に背くことは、政府の外交責任に対する「不当な干渉」に当たるとの見解を示した。