トランプ氏「口止め料」の初公判、四つのポイント

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トランプ氏の「口止め料」に絡む裁判の初公判が開かれた/Jabin Botsford/Pool/AFP via Getty Images via CNN Newsource

トランプ氏の「口止め料」に絡む裁判の初公判が開かれた/Jabin Botsford/Pool/AFP via Getty Images via CNN Newsource

(CNN) トランプ前米大統領は15日、元不倫相手に支払った「口止め料」を不正に処理したとされる事件の初公判に出廷した。

裁判はニューヨーク・マンハッタンの裁判所で始まった。トランプ氏は公判中、被告として週4回出廷する見通し。米政治史上、大統領経験者が刑事訴追された例はない。

トランプ氏はかつて不倫関係にあったとされるポルノ女優のストーミー・ダニエルズ氏に多額の「口止め料」を支払い、それを隠すために業務記録を改ざんしたとして、虚偽記載の重罪34件で起訴された。本人は無実を主張している。

15日はまず陪審員12人を選ぶ手続きが始まった。トランプ氏は法廷内でほとんど発言しなかった。同氏とともに着席した弁護士3人は、証拠の採用をめぐって検察側と意見を戦わせた。

陪審員の選任は難航が予想される。50人以上の候補が、トランプ氏を中立な立場で裁けないと述べて除外された。

マンハッタン地区検察はトランプ氏が公判に先立ち、箝口令(かんこうれい)を破ったことに対する処罰を改めて求めた。

以下、初公判のポイントを四つにまとめる。

陪審員候補の第1グループ、半数以上が中立性を否定

検察は陪審員候補としてニューヨーク・マンハッタンの市民96人を法廷に呼び入れたが、このうち半数以上が中立的な判断はできないと述べ、ただちに除外された。

被告が賛否の激しく割れる前大統領という人物であるために、陪審員選任の難しさが改めて浮き彫りになった形だ。

トランプ氏はマンハッタンで公正な陪審員をそろえることはできないと主張してきたが、残った候補者は公正な見地に立てると言明した。

判事はその後、候補者らに経歴やよく使うメディア、トランプ氏への感情など40項目の質問に答えるよう指示し、この時点でさらに1人の女性が除外された。

女性は「トランプ氏に対し、または同氏が大統領選の候補者である事実に対して、中立的な陪審員となることを妨げるような強い意見を持っているか」という質問に「はい」と答えた。

質問を受けた残り9人はいずれも、トランプ氏や元顧問弁護士のマイケル・コーエン氏の著書を読んだことがなく、トランプ陣営のボランティアなどを務めたこともないと答えた。

弁護側は審理の引き延ばしを図る構え

弁護側は数カ月前から公判の延期を主張していた。11月に大統領選が迫るなか、今度は審理の引き延ばしを図っている。

情報筋がCNNに語ったところによると、弁護側はすべての論点を上訴に持ち込むために、反論や判事との協議を繰り返す見通し。

一例として、陪審員の選任には1週間かかると予想されているのに対し、トランプ氏の弁護士はさらに15日、候補者への質問に通常の2倍の時間をかけるよう要請。判事と検察側がこれに同意した。

同弁護士はまた、判事に動議を出す48時間前に申立書の提出を求められる現行ルールには問題があると主張した。判事はこのルールについて、些末(さまつ)ともいえる動議が殺到しているために設けられたと説明。弁護側が最近、動議を連発していたことを暗に批判した。

これはトランプ氏側の法廷戦略のひとつだ。同氏はこれまで上訴を何カ月も長引かせ、裁判を先延ばしさせてきた。今度は6~8週間と見込まれている審理を、さらに引き延ばす構えだ。

検察は箝口令違反への罰金3000ドルを主張

検察はトランプ氏が裁判の証人や検察、法廷関係者について話すことを禁じた箝口令を破ったとして、SNSへの投稿3件に対し、1件につき1000ドル(約15万4000円)、計3000ドルの罰金を科すよう判事に要請。「裁判所がトランプ氏に、自身は刑事被告人だと自覚させることが重要と考える。すべての被告と同様、トランプ氏は裁判所の監督下に置かれる」と主張した。

トランプ氏は独自に立ち上げたSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、証人となるコーエン氏を「ゲス野郎」と呼び、元不倫相手とされるダニエルズ氏が2018年に不倫関係を否定した書簡を再投稿した。ダニエルズ氏はその後、書簡の内容を撤回している。

トランプ氏はさらに、ダニエルズ氏の元弁護士がX(旧ツイッター)で、同氏とコーエン氏を「いんちきのドキュメンタリー」やインタビューで金もうけしていると批判したコメントを再投稿していた。

15日朝には、米保守系紙ニューヨーク・ポストの記事から「偽証の常習者がトランプ氏の昔の軽罪を立証しようとして、ニューヨークの法制度を当惑させるだろう」という文言を引用して共有した。

判事は箝口令違反に関する公判を23日に開くことを決めた。

トランプ氏はこれまでもSNS投稿をめぐり、詐欺訴訟での箝口令違反で2回、罰金を科されている。

問題発言の番組テープは不採用、元モデルの証言は許可

判事はこの日、検察側、弁護側それぞれの要請に応じたいくつかの決定を下した。

検察側に沿った決定としては、裁判の担当を外れるよう求めた弁護側の要求を拒否したほか、トランプ氏との不倫関係を告白したもう1人の女性、元モデルのカレン・マクドゥーガル氏による証言を認めた。タブロイド紙「ナショナル・エンクワイアラー」がトランプ氏のライバルを批判した記事も、証拠として採用された。

検察によると、ナショナル・エンクワイアラーを保有していたアメリカン・メディア(AMI)は16年大統領選の5カ月前、マクドゥーガル氏に不倫の口止め料15万ドルを支払うことに同意したという。

トランプ氏はマクドゥーガル氏との関係を否定している。この口止め料は今回の罪状に含まれていないが、検察は同氏の証言によって、トランプ氏が口止め料を支払ってきたパターンを裏付けられるとの考えだ。

判事は一方で、トランプ氏が女性蔑視発言を連発した過去のテレビ番組「アクセス・ハリウッド」のテープについては、有害な偏見を理由に法廷での再生を見送る判断を下した。

検察はテープ自体に加え、番組の内容が16年に明るみに出た後、トランプ氏から性被害を受けたと申し出たほかの声も証拠として提示することを求めたが、判事は「単なるうわさ」だったことが分っているとして却下した。

検察はさらに、女性作家のジーン・キャロル氏がトランプ氏を名誉毀損(きそん)で訴えた際の証言も提示したい考えだったが、「裁判の中に裁判を組み込むことになる」との理由で却下された。

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