再登板の安倍首相、日本と自身の復活に取り組む
オバマ米大統領も経済成長見込みと安全保障上のリスクがともに最も大きいアジアに、軍事力の再配備を含む戦略的な軸足を移している。中国と協調に向けた対話を行う一方で、同国の封じ込めや孤立化も狙っているようにみえる。
安倍政権もまた、防衛費増額、沖縄の防衛力強化、海上保安庁の能力強化や再編などを打ち出し、米軍との協力関係強化のため「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の見直しも目指している。
夏の参議院選で勝利し、与党が衆参両院の多数を占める状況になれば、日本の軍備を制約している憲法の改正も実現する可能性も生まれる。国内や周辺諸国では論議を呼ぶだろうが、米政府は日本による防衛分担拡大の観点から歓迎するだろう。
強大化しても脅威とはならないとしていた中国の「ほほ笑み外交」は崩壊し孤立しているが、安倍政権による右寄りの政策転換も対外関係悪化や緊張の高まりに終わる可能性もある。
現状の対決姿勢や威嚇(いかく)ではなく、冷静な外交を行うために冷却期間を置くことが、尖閣諸島を巡る重大な対応の誤りを避けるためには良いのだろう。アジア地域で第2次世界大戦後に日本が成功と尊敬を勝ち得たのは、軍事力による問題解決を放棄したことが大きい。
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本記事はテンプル大学のアジア研究学科ディレクター、ジェフリー・キングストン教授によるものです。記事における意見や見解はすべてキングストン氏個人のものです。