ISIS、モスル周辺の市民数万人を「人間の盾」に
イラク・バシカ近郊(CNN) イラク第2の都市モスルを過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」から奪還する作戦が進行する中、ISIS支配下にある人々が戦闘に巻き込まれる懸念が高まっている。ISISは女性や子どもを含む数万人を拉致し、モスルの中心部に強制的に配置。「人間の盾」として、イラク軍部隊と米軍主導の有志連合による侵攻を阻止する考えだ。
国連の当局者がこのほど語ったところによると、ISISはモスルの周辺地域に住む約8000世帯の家族を拉致。銃を突き付けて脅迫しながら同市まで連行したという。国連はISISが拠点を置くモスル南郊の街の人口について、以前の2万3000人から6万人に急増したと発表。この街の攻略を図るイラク軍は、作戦を遂行する上で多くの民間人の存在がまぎれもない懸念事項だとの認識を示した。
モスル奪還作戦に参加するイラク北部クルド地域政府の治安部隊ペシュメルガの幹部も、モスルへの進軍の速度を緩めていると明かす。「民間人の生命を守るため、作戦行動は慎重にならざるを得ない」という。
国連人権高等弁務官事務所の報道官は、ISISが自軍の領域や部隊への軍事攻撃を見送らせる目的で、人質に取った民間人を利用すると説明。「邪悪かつ卑劣な戦略の下、女性や子どもを含む数万人が人間の盾にされる」と非難した。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルのリン・マールーフ氏は「民間人を人間の盾に使うことは戦争犯罪だが、イラク軍や有志連合も民間人に多大な被害を及ぼす可能性のある攻撃は避けなくてはならないという国際法上の義務を負う」と指摘する。
ISISが2年にわたり支配するモスルの中心部は一段の人口密集地であり、現在生活している住民の数は100万人を超えるともいわれる。今後本格的な市街戦に突入すれば、民間人に膨大な数の犠牲者が出る恐れがある。